【新店・祖師ヶ谷大蔵店ができるまで】(後編)建築家・坂田裕貴さん×Minimal代表・山下対談「装飾しすぎない上質なパティスリー」

2023.08.14 #Minimal's Story & Report

2023年9月16日にオープン予定のMinimal新業態「パティスリー・祖師ヶ谷大蔵店」は現在、鋭意施工中です。

店舗設計を担当した坂田さんと、Minimal代表・山下が、「職人のアトリエ」というコンセプトについて語ります。

後編は、新店舗のディテールについて語り合います。

※前編はこちら

“シティクラフト”を表現する外観

坂田さん
今回は、工房併設のパティスリーということで、工房の作業風景が見えることを大事にしましたね。

山下
路面に全部窓をつけて、外からも見えるようにしてね。

ファサード(建物の正面)の話からすると、外側をそんなに派手に作り込まずにシンプルにしたんだけど、グレイのステンレスのパンチングボードですべて覆うんですね。

これって何かというと透けてるんです。穴が空いてるから。僕らの発想には出てこないようなものなので、けっこう仕上がりに期待してるんですけど。

坂田さん
基本的には建物の躯体を活かして、世界観を表現できる手法を考えていましたね。

夜になると、パンチングから室内の光が洩れて雰囲気が出るのもいいと思います。

山下
僕らのやりたい「インダストリアル」や「クラフト」感って、こういうことなんだ!と思いましたね。

オーガニックな天然のものを扱うようなお店のトーンというより、「シティクラフト」と僕は呼んでいるのですが、街のなかにあるクラフトをイメージしていたので、このパンチングのアイデアはさすがだなと思いました。

一番に見せたいものは「ショーケースのケーキ」

坂田さん
ファサードは最終的にシンプルに収めているのですが、当初は庇(ひさし)を道路に張り出したり、「付け足す」ようなデザインの話もありましたね。

山下
うん。僕がそれはやめたかった(笑)。
ファサードについてはいろいろ議論して、この商店街に違和感なく馴染むようにしたかったので、バーンと目立つよりも「引き込む」ようにしたかったんですね。

その上で僕らが「何を見せたいのか」というと「Product is King」という話をしたんですね。ケーキ屋さんが何を売るべきかと言ったら、ケーキを売るべきだと。

だからケーキのショーケースがちゃんと見える店構えをしたいねと。

坂田さん
それで、入口を内側に凹ませるアイデアが出てきました。

山下
そうすることで、ショーケースがあるカウンターのラインと、ショーウィンドウのラインを平行にできます。

坂田さん
以前、自動車のショールームの設計をしたときに、路面からのガラスの反射にすごい苦戦したんですよ。

そのとき、ガラスは「正体」で向き合うと一番ちゃんと見えることが分かっていたので、今回もガラス面の角度を揃えることは大事でした。

山下
これで入口の庇の問題も同時に解決できるわけです。

僕、壁面に対してボコッと出ている凹凸のファサードがあまりきれいじゃないなと前から思っていて、それより内側に引き込むことで動線を作り、目線も誘導するデザインがすごいきれいだなと思っていたんです。

坂田さん
「見せたいものがショーケースの中にある」というのは本当にその通りですよね。

山下
ファサードの役割って「自己紹介」ですからね。

あとは「入ってみよう」とワクワクさせる動線。僕らのアイデンティティや見せたいものを考え尽くして再構築したデザインになっていると思います。

コンクリートの現しと、パティスリーのバランス

山下
内装の話に移ると、今回はコンクリート打ち放しですね。

坂田さん
はい。新築のテナントに入るので躯体のコンクリートが現しのままでした。

「職人のアトリエ」という世界観にも合っていましたので、この雰囲気をそのまま活かそうと思いました。

だから、壁はクリア塗装※するだけにとどめ、新規の壁も型枠でコンクリートを流して馴染ませるようにしました。
※外壁の色や柄を保ちつつ塗装すること

山下
空間は超シンプルなので、たぶん普通のパティスリーっぽくないんですよね。ヨーロッパ調の煌びやかな感じではないです。

でも、そこにたとえば、床にラグを敷いて色味とラグジュアリーさを足している。

坂田さん
これは緒方さん(Minimal取締役)のアイデアでしたね。

山下
僕の発想からは出てこないし、緒方さんの色が出てすごくよかったです。

こういう趣味性の強いディテールが入ることで、「職人のアトリエ」という世界観ができていくんですね。
ところで、トイレのある壁だけ白く塗装してるよね。

坂田さん
はい。僕の中の裏テーマで「富ヶ谷本店のバージョンアップ」というのがあったので、全部打ち放しだと離れすぎちゃうかなと思って、白も入れました。

山下
最初、トイレのドアも壁に馴染ませて探していたけど、ちょっとスッキリしすぎてしまうのが嫌で、僕のこだわりもあってアンティークを探してもらいましたね。

坂田さん
そうですね。

※画像キャプション:坂田さんとMinimalメンバーで内装を議論する様子

デセールをゆったり楽しむための椅子

山下
あと、個人的にこだわったのは、客席の椅子ですね。

坂田くんからサンプルを取り寄せてもらって検討したとき、本当はもっとかっこいいデザインの提案ももらっていたのですが、座り心地を重視しました。

デセールを出す席なので、ちゃんと背もたれがあって落ち着けて、ゆったりと居心地がよいことを大事にしたいと思いました。一緒に探しにも出かけたね。



坂田さん
そうでしたね。
アンティークドアやラグのように一つ一つの小さなところは「職人個人の趣味を集めた」みたいにしたかったので、僕も皆さんの意見を取り入れながら進めていました。

全体がコンクリート打ち放しになる分、僕の中ではバランスを気にしていて、造作するカウンターに少し意匠を入れて、「パティスリー」のイメージを踏襲するような装飾を施すようにしました。あまりに細部の話ですけど(笑)。

山下
これから現場作業に入るから楽しみだね。

坂田さん
ちょっと戦々恐々としてます(笑)。

あとは、店舗から工房の様子が見えることも重視したかったので、カウンター席の正面をガラスにして、天井の蛍光灯の配置を工房に引き込む形にしています。

向こう側につながるように見せることで、奥行きを感じてもらうための目線の誘導ですね。

最小限の看板と、幻の真鍮のドア

山下
「装飾しすぎずシンプルだけど上質なパティスリー」というバランスが肝になりましたね。

それを象徴するのがやっぱり外観だと思っていて、Minimalのサインもすごくシンプルですよね。いろいろな案がありましたけど、ロゴの塗装と、小さな金属板の看板だけに落ち着きました。

富ヶ谷本店のときは、装飾的な壁面デザインに凝ったりしましたけど、僕らが求めるものが10年の中で進化しているんですね。自分たちに対する自信が芽生えてきたということかもしれません。

坂田さん
ドアの色味は最後まで話しましたね。

山下
うん。僕は本当は真鍮製のドアにしたかった……。ラグジュアリーな雰囲気が外観に一点だけあってもいいかなと思って。

……やっぱり今から変えられないかな?(笑)

坂田さん
ドアが真鍮じゃないことで、より明るいゴールドにできたと思いますよ。真鍮だと暗くなりますから。あとドアの重量も軽くなって開けやすくなりましたし。

山下
いやあ、これが建築家のスキルですよ。納得感がある!

坂田さん
10年で経験積んできてますから(笑)。

山下
これがオトナになるってことなのか!(笑)

最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。
祖師ヶ谷大蔵店は2023年9月16日オープン予定です。

 

 

坂田裕貴さん

設計事務所を経て、2011年 フリーランスの建築家ユニットHandiHouse projectの活動を開始。「妄想から打ち上げまで」の言葉を掲げ、住み手と共に設計、施工、制作作業を行う参加型の家づくりを行い家の取得プロセスをエンターテイメント化することで、住宅サービスの価値を広げた。現在はHandiHouse projectの活動に区切りをつけ、建築設計に従事。植物好きが高じてa.d.p(anhelo de plantas = スペイン語で植物へのあこがれの頭文字)と称した建築設計事務所を構え、住宅や商業空間など建築・内装設計を行う。プロジェクトの背景にあるルールが、環境からの影響を受け止めたカタチを想像することで、生き生きとした空間作りを目指す。
https://www.adp-ad.jp/

 

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