創業のきっかけや想いからチョコレートの特徴や楽しみ方まで、Minimalにまつわるストーリーをお伝えしていく本連載。第2回は「素材・製法」についてお伝えします。
※第1回はこちら
▼目次
・カカオは南国のフルーツ。チョコレートは発酵食品
・目指すのはワインの世界?カカオと砂糖のみ、“刺し身”のように素材を活かす
・引き算のチョコレート。Engineering(製法技術)の追究
・ザクザクとした食感のひみつ
・焙煎のひみつ。香り高いチョコレート
・トップレベルで修行した職人達のチームワーク
・国産素材にもこだわる
・まだ誰も食べたことの無い“新しい美味しさ”を目指して
カカオは南国のフルーツ。チョコレートは発酵食品。
じつは繊細。南国フルーツカカオ
チョコレートの原材料である「カカオ」は、熱帯地域で採れるフルーツです。 アジア・アフリカ・中南米など赤道近くの大自然で栽培されています。
そしてMinimalのチョコレートは、南国フルーツであるカカオの種を原料に、職人が1枚1枚手づくりでお造りします。
ワインやコーヒーと同じように、原料から丹念にものづくりすることで、廉価なお菓子やおやつでも、高級品でもない、「嗜好品」に仕上げます。
ある産地のカカオ豆はナッツのよう。ある産地のカカオ豆はベリーのようにすっぱい。また、カカオは農作物であるため、気候風土や農家によって味わいが大きく変わります。 その年の天候によってもブレが出ます。 じつは、カカオはこのようにとても繊細です。
その特徴を理解して、最大限に活かしていくために、カカオ豆が出来る工程を理解する事がとても大事です。
チョコレートは発酵食品!?
カカオ豆のキャラクターを決める要素を大別すると3つあります。
- 1.品種
- 2.テロワール
- 3.農法
1. はカカオそのものの品種です。
2. はカカオが育つ土壌や環境。
そして3. は栽培方法と発酵・乾燥です。
ここで面白い発見は、カカオ豆は現地で発酵・乾燥という工程を経ている発酵食品であるという事実です。チョコレートの主原料はカカオ豆である事を考えると、チョコレートは発酵食品と言えます。
特にMinimalのチョコレートはカカオ濃度が60%以上、多くは70%~80%台のダークチョコレートです。原料はシンプルにカカオ豆とお砂糖だけである事からも、発酵の影響を大きくうけます。
Minimalはこのカカオ豆の発酵に早くから注目しており、2014年から現地に入って発酵と乾燥を研究し、現地の農家さんと改善を繰り返しています
2015年には、当時世界でも類を見ないような同じ農園の同じタイミングで収穫された豆の発酵違いもセットで発売しています。(当時はまだ発酵に着目するチョコレート店が少なく、相当マニアックな商品でした笑)
目指すのはワインの世界? カカオと砂糖のみ、“刺し身”のように素材を活かす
カカオ豆という素材に注目し、その違いを楽しむチョコレートを通して目指すのは、ワインのような世界です。
ワインは、産地や品種の違い、テロワールの違い、そしてつくり手の違いのかけ算でそれぞれの個性を表現し、世界中に熱狂的な愛好家が多くいます。ワインを楽しむことは、文化として定着していますよね。
上述したようにワインは、カカオ豆の風味を決める要素とかなり多くの共通項をもっています。カカオ豆という素材を表現したチョコレートは、ワインの世界のようになる可能性を秘めているのです。
チョコレートはこれまである程度大量生産でチョコレート生地をつくり、カカオの違いというよりは、足される副材料や技術を楽しむスタイルが主流でした。
その流れとは違う楽しみ方が、カカオ豆という素材に注目したチョコレートです。
Minimalのメンバーは皆、カカオ豆という素材に注目し、その違いを味わうという驚きと楽しさの経験を根っこの原体験に持っています。
自分達が感動したそのカカオ豆の個性が活きたチョコレート体験を、多くの皆様に広げて伝えていくことで、長い年月をかけて、チョコレートもワインの世界のようになると確信しています。
そのためには、私達はカカオ豆の個性を鮮やかに表現することに徹底的にこだわります。
Minimalのシグニチャーである板チョコレートに使っている材料は、カカオ豆とお砂糖のみというたった2種類です。
そのほとんどがハイカカオ濃度。添加物や香料を一切使っていないにもかかわらず、Minimalのチョコレートの香りや味わいは驚くほど多様で個性豊かです。
飴がけナッツ、鮮やかな柑橘フルーツ、ブドウジュースのような凝縮感、ブラックベリーのような酸味と渋味、ハーブのような長い余韻、スミレのような色の濃い花の香り、シナモンのようなスイートスパイス感、蜜感のあるさつまいもののような甘さ。
Minimalのチョコレートを表現する一例をあげるだけで、それがカカオ豆とお砂糖のみで作られたチョコレートの香りや味わいのことを言っているとは信じられないかもしれません。
私達は「カカオ豆を刺身でだす」というイメージでチョコレート造りを行っています。カカオ豆の個性を重視して、素材の多様な個性をどうすればより鮮明に表現できるかの試行錯誤を徹底的に繰り返しています。
引き算のチョコレート。Engineering(製法技術)の追究
最小限の素材だけでつくる『引き算』の製法
Minimalは廉価なお菓子や高級ショコラのチョコレートつくりの基盤になっている、大量生産を目的にした製造工程ではなく、日本人の眼鏡でチョコレートを再構築する事を目指しています。
それは、和食や日本食の発想でチョコレートを再解釈することに繋がります。カカオ豆に油分や添加物などを加える『足し算』のテイストではなく、最小限の素材だけでつくる『引き算』の製法で、美味しいチョコレートをつくると決めました。
それが、カカオ豆を刺身のように表現した素材そのものを活かしたチョコレート造りに繋がると考えます。
ブランド名の『Minimal』はチョコレートを引き算した最小限であるカカオ豆を大事にする意味を表し、そのミッションは『チョコレートを、新しくする』としました。
カカオ豆という素材の理解を深めていき、その個性的な香りや味わいを最大限に引き出す製法技術をMinimalではEngineering(エンジニアリング)と呼んでいます。
「素材=カカオ豆=INPUT」を「チョコレート=OUTPUT」へ変換
Minimalの職人は、チョコレートを扱うエンジニアとして、日々一つ一つのカカオ豆の最適なレシピを追究しています。
チョコレート造りの考え方は独特です。
チョコレートをお菓子の一種として捉えて製菓的な技法でアプローチするショコラティエやパティシエに対し、「素材=カカオ豆=INPUT」を設計された価値を有する「チョコレート=OUTPUT」へ変換するという考え方をします。
手法も製菓的なレシピを決定する、というよりはゴールへ向けて科学的な指標をもってアプローチしています。
食の世界で、分子ガストロノミーと呼ばれた概念が近いでしょうか。
当たり前、を信じていません。根底にあるのは、常に常識を疑い、新しい発見や驚きを楽しむ姿勢です。
色々なものを一つ一つ検討し、最適な手法を採用します。そのやり方が従来のチョコレートの製造手法からかけ離れていたとしても、生みだされたものが、誰かにとって「新しい」「美味しい」という驚きがあれば迷わずその道を追究します。
ザクザクとした食感のひみつ
Minimalのチョコレートの特徴の1つとしてザクザクした食感があります。
そのポイントとしてカカオ豆の個性を表現するためのエンジニアリング技術の一つに摩砕精錬技術があります。
従来のチョコレートは加工しやすさを重視して、滑らかに加工されています。しかし、Minimalのチョコレートはカカオ豆の香りや味わいを最大限に発揮するために、その常識を打ち破ります。カカオ豆の粒子を粗挽きにしてザクザクとした食感を残す手法をもっているのです。
チョコレートを引き算していき、「カカオ豆を刺身でだす」イメージでストレスや加工を最小限に抑えた結果、手法としての粗挽き、ザクザク食感が生まれました。
Minimalのチョコレートの香りや味わいがとても鮮烈な理由の一つが、ザクザク食感を残す、この低ストレス加工法なのです。
カカオ豆という素材に注目して、引き算のスタイルを採用した結果、従来にはないザクザクした食感のチョコレートという逆転の発想のモノづくりとなったのです。
焙煎のひみつ。香り高いチョコレート
Minimalのチョコレートの特徴の一つに味わいが個性的で香りが高いと言うことがあります。そのポイントとして、カカオ豆の個性を表現するためのエンジニアリング技術の一つに焙煎技術があります。
私達は、カカオ豆ごとに焙煎時間と温度を1分1℃単位で変え、最適な焙煎を探すために試行錯誤を繰り返しています。その数は創業から数え切れない程になりました。エンジニアリングを標榜する私達は、その試行錯誤の経験から焙煎におけるポイントや学びをため、体系化しています。
例えば、あるカカオ豆には発酵由来の酢酸が染みこんでいます。酢酸の科学的な揮発温度は118℃です。酢酸由来の酸味を残していくには、あえて118℃より低い温度体での火入れをして酢酸の揮発を最小限に抑えます。これはカカオ豆の発酵の事を理解し、その科学的な特性も理解し、さらにはカカオ豆の個性を解析できる事で初めて技術としての焙煎に落とし込まれます。
とてもとてもマニアックな事ですが、これを膨大な試行錯誤という経験から導き出し、その後にそれを理論で理解するという順番で行っています。
この順番は意外に大切で、私達はあくまでチョコレート造りにおいては、感覚や感性を大切にして、職人達の個人的な“美味しい”を重要視しています。
こうして、膨大な失敗を経て、少しずつ焙煎技術が磨かれていきます。
火入れは、大きく大別すると3パターンで、浅煎り、中煎り、深煎りとカカオ豆の特性応じて最適なものが採用されます。
そうすることで、カカオ豆本来のチョコレート感、ナッツ感、フルーツ感、ハーブ感などの独特の香りや味わいの個性が焙煎によって表現されます。
板チョコレートに付属しているレシピカードにはその焙煎や製法のひみつが記載されているので、そこもMinimalのチョコレートを楽しんで頂くポイントの一つです。
トップレベルで修行した職人達のチームワーク
そんなエンジニアリングを追究するMinimalのチームは多様なバックグランドをもった職人達が集まっています。
パティシエやショコラティエはもちろんのこと、バリスタ、ソムリエ、パン職人、料理人など。バックグランドは様々ですが、星付きレストランやフランスM・O・F(国家最優秀職人章)など国内外のトップレベルのレストランやパティスリーで腕を磨いた職人達です。
共通しているのは、ものづくりへの愛情とカカオ豆という素材への深い興味です。
そして、Minimalのものづくりの根底の考え方は「チームでのものづくり」です。
チームでのものづくりのレベルを上げる施策は多くありますが、象徴的な施策としてシェフを置かないという業界ではとても珍しい体制でものづくりを行っています。
一人一人がプロフェッショナルとして、腕を磨くための環境として新商品開発を誰か一人のシェフに任せるのではなく、チームのメンバーがそれぞれ担当します。普段から多くの打席に立つことで、自身の腕を磨き、エンジニアリング力を高められる環境になっています。
そして、それぞれが貯めた経験やナレッジをチーム全体に共有還元して、チームでものづくりを行う事で、相乗効果を高めて、指数関数的なエンジニアリング力の向上を目指しています。
チームでものづくりをする事は、クオリティの安定と供給量の安定を生み、多くの人にカカオ豆の個性を活かした新しいチョコレート体験を届ける事ができます。
国産素材にもこだわる
創業から7年を経て、今ではシグニチャーの板チョコレートのみにならず、代々木上原にガトーショコラ専門店も展開しています。
自分達の香り高いチョコレートを使用したスイーツ作りでも技術研鑽を続けています。
スイーツを作る場合は、チョコレートのみならず、フルーツや栗など季節に合わせて旬の素材を使用します。カカオ豆にこだわる事と同様に、国産素材にもこだわっています。
例えば、バレンタインのメイン商品の一つである「生ガトーショコラ -苺 from いちご家めい-」では、女峰という希少な国産品種を使い、とても香りが高い苺を生産してる香川県の農家さんから直接仕入れさせて頂いています。
また、オランジェットでも愛媛県産のレモンとブラッドオレンジを使用したり、こだわりの国産素材や旬を意識した素材にも徹底的にこだわっています。
まだ誰も食べたことの無い“新しい美味しさ”を目指して
カカオ豆の個性を活かしたチョコレートを使って、新しいチョコレート体験を届けたいという想いが根底にあることをお伝えしてきました。
そのために、素材であるカカオ豆の理解を深めて、徹底的にものづくりこだわりをもってエンジニアリング技術を磨いていきたいと思います。
まだまだMinimalのチョコレート造りは始まったばかりですが、一つ一つチョコレートやスイーツに想いを込めて、手仕事にこだわりながら、その時の最高のチョコレートをお届けします。
Minimalは日本人による繊細な感性で、素材そのものの個性を活かしたチョコレートをつくります。原料はカカオと砂糖だけです。香料などを足さず、「最小限」の要素と、極限までの「引き算」の発想でつくる、新しいチョコレートを一人でも多くの皆様に味わって頂けるように頑張ります。
何より私達自身がその過程を楽しんでいきたいと思います。
まだ誰も食べた事の無い“新しく美味しいチョコレート体験”をぜひ私達と一緒に味わい、つくっていくことに参加して頂ければとても嬉しく思います。
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