【Minimalがわかる4つのストーリー 】その1:新しい選択肢としてのチョコレート

2022.01.16 #Minimal's Story & Report

Minimalは2014年に東京の富ヶ谷で立ち上がった、スペシャルティチョコレートの専門店です。

世界中のカカオ農園に足を運び、カカオ豆から板チョコレートができるまでのすべての工程を自社工房で行っています。

初めてのBean to Barチョコレートの衝撃

チョコレート

創業のきっかけは、代表山下と、当時コーヒーショップを開いており、現在はMinimalでエンジニアリングディレクターとして働く朝日との出会いでした。

知り合いの紹介で通い始めたその店で、カカオ豆と砂糖だけで作った手作りのチョコレートを食べて山下は衝撃を受けます。

カカオ豆と砂糖しか使ってないのに、まるでオレンジのような香り。見た目はふつうのチョコレートと変わらないにも関わらず、まったく今まで食べたことのないフルーティな味わい。

そのギャップに驚かされると同時に、その美味しさに強く心を動かされました。これを日本人ならではの繊細な感性で作ったら…。

そこから山下はすぐにアメリカ、中南米、ヨーロッパの“Bean to Bar”のブランド創業者やカカオ生産者を調べて足を運び、帰国してから4ヵ月後の2014年12月に朝日を含む3人のメンバーと共にMinimalを立ち上げました。

創業から3年後には、世界的なチョコレートの品評会で金賞をいただくこともできました。

しかし、世界で1番なのは失敗の数なのかもしれません。手探りで0から始めたチョコレート。創業から金賞受賞まで、その過程はぜひこちらの記事をご覧ください。

素人の僕たちが脱サラして3年で最高峰の品評会で金賞を受賞するまで

同じモノなんて一つもない。“一期一会のチョコレート”という考え方

Minimalのものづくりの根底には「カカオは南国フルーツであり、自然の営みの中でできる農作物で同じモノなんて一つもない。一期一会のカカオ豆という素材に徹底的に向き合う」という考え方があります。

山下が初めてチョコレートを食べた時のような新鮮なカカオ豆という素材の驚きを、Minimalのチョコレートを通して多くの皆様と分かち合いたいと思っています。

ある産地のカカオ豆はナッツのよう。ある産地のカカオ豆はベリーのように酸っぱい。そのくらいカカオは多様な果物です。

そして、例え同じ農園でとれた豆だとしても、香りや味わいは異なります。工房に毎日届く豆にMinimalの職人チームは真剣に、真摯に向き合い、その個性を最大限表現する事に奮闘してます。

カカオ豆

「素材なり」という考え方。

個性の異なる豆に対し、素材なりの良さを引き出すには、今日はどんな製造法を用いれば良いだろう?といつも考え続けることです。

毎回豆が変わることは大前提。カカオ豆とはすべてが“一期一会”なのです。そんな一期一会のカカオ豆と毎日毎日、何時間も向き合うにつれて、次第に“面白さ”や“愛おしさ”を感じはじめました。

自然には抗わない。自然の営みに寄り添う。そのうつろいを楽しむ。

カカオ豆と向き合う日々の中でたどり着いたのは、本質的な、素材に根ざした姿勢です。

日本人の感性で再構築する新しい“引き算のチョコレート”

自然の営みに寄り添い、その時期ごとの旬の素材の個性を活かすことは、じつは「日本食・和食」の考え方に通じています。

製造方法に素材を合わせるのではなく、一期一会の素材の特性に応じて製造方法を変えることで素材の良さを引き出す。その料理法の真髄は日本人にはなじみ深いものです。

Minimalのチョコレートは余分な添加物を使わず、「カカオ豆に砂糖を加えるだけ」という必要最小限の成分でつくられます。

今までのチョコレートが、味や香りを「足し算」で加えていくものならば、Minimalは、チョコレートを「引き算」して日本人ならではの発想でチョコレートを再解釈しています。

これまでの大量生産のために最適化された製造工程ではなく、“素材最適”にチョコレートの製造工程を見直して「リ・エンジニアリングする」という姿勢で挑んでいます。

日本人だからこそ辿り着けた、新たな表現として、Minimalのチョコレートはザクザクとした食感が特徴的です。

これは、カカオ豆の粒を粗く残す独自製法によるもの。風味の変化を最小限にとどめることで、チョコレートをかじるとカカオの香りが口いっぱいに広がります。

チョコレートを引き算していき、「カカオ豆を刺身でだす」イメージでストレスや加工を最小限に抑えた結果ザクザクとした食感になったのです。

個性、過程、道草を楽しみ、手仕事の面白さに向き合う

Minimalのチョコレートはすべて職人達の手仕事で造られています。

1度単位に温度調整する焙煎、1μ(1000分の1ミリ)単位で粒度を調整する摩砕、1分単位で調整する精錬度合いなど、経験積み上げながら、その感性を磨き、チョコレートというアウトプットに落とし込んでいきます。

Minimalを創業してから7年間、毎日毎日、累計で1万通りを越えるレシピ開発をしてカカオ豆に向き合ってきました。

しかし残念ながら、まだまだカカオ豆はわからないことや思い通りにいかないことだらけです(笑)

2歩進んだと思ったら、次の3歩下がるといったような事が日常茶飯事に起こります。

それでもMinimalの職人達は悪戦苦闘しながらも、そのこと自体を楽しんでいます。

Minimalの工房が立ち上がり、ショコラティエやパティシエ、パン職人、料理人、バリスタ、ソムリエなど様々なバックグランドの仲間が集まる中で、自然と「素材に真摯に向き合い、常に新しい発見を探して、時に道草を楽しみながら、手仕事の面白さに向き合う」という姿勢が醸成されました。

個性溢れるカカオ豆との悠久の対話とも言える仕事ですが、真剣に向き合うことでカカオ豆の事が少しずつわかり、結果としてその努力に応えてくれるようになります。

一期一会のカカオ豆の個性を認めて、それを表現する事。

そして、そのために引き出す製法を試行錯誤して、そこに職人の手仕事や技術が掛け合わさったチョコレートは、カカオ豆本来の味わいや香りが濃厚に息づくとともに、原産国の自然や文化的背景を伝える「物語のある食材」にたどり着きます。

「三方良し」を目指して

コロナ禍になる前は、毎年必ず産地を訪れ直接農家の方とコミュニケーションをとっていました。現在も、メールやオンラインミーティングで連絡を欠かさずとっています。

カカオ生産国は赤道直下の国々です。カカオ農家の多くは貧困層で、西アフリカの一部では児童労働問題が残っています。

その現実に対して、Minimalでは“質の良いカカオ豆”を自ら農園まで探しに行って、フェアトレード以上の価格で買い取っています。

でもその“質の良いカカオ豆”というものが一朝一夕で栽培できるものではありません。時間をかけて、農家とMinimalが一緒になって取り組んでいくことが重要です。

だからこそ、直接行く意味があると考えています。
長い時間が必要な事を成していくには、農家に直接会って、話をして、想いを伝え、共有しないと始まらないと思っているからです。

そんな考えのもと、世界中の農家とコミュニケーションしていたら、コロナ禍前は年間4ヶ月以上も農家に会いに行くようになりました。

直接訪れ、農家が“良いカカオ豆”を作っていけるように、現地でカカオ豆を収穫した後に行われる発酵・乾燥プロセスを指導して、毎年毎年農家と一緒に改善を繰り返していきます。

いきなり完璧なモノができるわけではありません。農園を視察に行って満足せず、一緒につくっていくという粘り強い姿勢が大事なんだと学びました。

さらには、2021年からは日本でカカオ栽培も自社ではじめました。もっとカカオ豆の事を知って、農家と一丸となって“良いカカオ豆”をつくる事が出来る研究を始めています。

農家が質の高いカカオ豆をつくってくれれば、Minimalは高価格で買い取ります。
そうすると、農家の生活が向上したり、自分のカカオ豆への誇りが醸成されます。

一方でMinimalは個性豊かなカカオ豆を、素晴らしいチョコレートに仕上げて、お客様に届けます。そうすると、お客様は新しく、美味しいチョコレートを体験をすることができ、満足いただければ対価を払っていただけます。

Minimalは対価を頂くことで、またカカオ豆を買うことができるという循環が回っていきます。

私達はこれを「三方良しのエコシステム」と呼んでいます。

きちんとした正当な対価を農家に支払い、良い豆を美味しいチョコレートに仕上げる技術を磨き、お客様に新しくて美味しい体験を届ける。

ポイントは、農家とお客様の間にいるMinimalがズルをしたり、サボったりしない事です。

Minimalが大きくなれば、末広がりの円のように、このエコシステムが大きくなっていく。

関わる人がみんな幸せになり、ビジネスインパクトとソーシャルインパクトが両立します。

正直今は偉そうに語れるほどの規模ではないですが、美味しいチョコレートを食べて幸せになる人が多くなればなるほど、農家を含めた社会のサステナビリティやエコシステムが良くなっていくということです。

新しい選択肢を提示し「チョコレートを新しくする」

カカオ農家さんを直接訪れる中で、教えてもらったことがあります。
「本当の豊かさとは何か?」

創業当初、カカオ豆を「3倍ぐらいの価格で買いたい」と言っても、買わせてもらえませんでした。

カカオ豆は、市場で取引価格が決まるため、農家さんには価格の決定権がありません。彼らにとっては、100トンぐらいの量を売らないと意味がないという経済構造なのです。

ところが私達は1トンほどしか買うことができませんでした。そうすると、3分の1の価格でも100トンを売った方が儲かります。そんな中で、インドネシアののある農家さんが、私達を選べば収入が減るにもかかわらず、選んでくれました。

「どうして私達を選んだのですか?」と聞いてみると、彼ははにかみながら、こんなことを言いました。

「僕は30年間カカオ豆をつくってきたけど、今まで自分の生活を削って、量をつくるということしかなかった。

Minimalが初めて、自分達の生活を守りながら自分達の収益を上げて、自分達の豆が世界中に届く、ということをやってくれた。自分のつくった豆が美味しいチョコレートになって多くの人が食べてくれている実感を初めてもつことができた。それはとてもとても誇らしい事なんだ。

その誇りをもちながら、自分の子供や孫たちに収益をあげていけるという選択肢を残す事が出来るかも知れない。
だから僕は、君たちとやりたい」と。

その時に気づいたことは、豊かなことというのは「選択できる」ということなんだということです。

どちらが正しいということではなく、正しさはその人にとって相対的なモノで、大事な事は選べる選択肢があるということ。

この場合は、「安い単価で量を売るか」「少量でも高い単価で売るか」の選択肢です。

誰かに押しつけるのではなくて、選択するという価値。

私達は、カカオ農家さんにも、そしてお客様にも、新しい選択肢としてのチョコレートを提示していきたいと思います。

嗜好品として楽しむことができる、毎日を少しだけ豊かにしてくれる「新しいチョコレート」。
長時間労働ではなく、質をあげて稼ぐことができる農家さん。

そんな新しい価値、新しい選択肢をこれからも提案していきたいと思います。

そして、その先に、廉価なお菓子でもなく、高級なショコラでもない、新しいスペシャルティチョコレートの世界があると思っています。

そんな新しいチョコレートの世界の実現を、Minimalのブランドミッションである「チョコレートを新しくする」という言葉に込めてます。

恐らく現実的には100年くらいかかるかも知れません。

しかし何事も目の前の一歩からです。未来に向かって、一枚一枚のチョコレートを真摯につくっていきたいと思います。

ぜひMinimalと一緒に新しいチョコレートの体験を広げていきませんか。

 

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