Bean to Bar(ビーントゥバー)とは?ゼロからわかるBean to Bar

2023.02.07 #Minimal's Story & Report

チョコレート業界のサードウェーブとも呼ばれる「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」について、その起源や他のチョコレートとの違いをまとめました。

 

Bean to Barとは

カカオ豆(Bean)から板チョコレート(Bar)ができるまでの全工程を自社で一貫管理して製造する製造スタイルを「Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)」と呼びます。

……と言われても、なんだか当たり前の話に聞こえるかもしれませんね。
ところが、既存のチョコレート業界ではこれは画期的なことでした。

通常の製造スタイルでは、カカオ豆の「原産地」と、製菓用チョコレートの「一次加工メーカー」と、最終製品に仕上げる「製菓メーカー」とそれぞれの役割が分けられています。
これはチョコレートの工業化につれて、大量生産に対応して進化させたシステムでした。その恩恵として安価で均質なチョコレートを食べられるようになりました。

一方で、チョコレート自体の味わいは一次加工メーカーが提供する製菓用チョコレート(クーベルチュールと呼ばれます)に依存するため、スーパーマーケットに並ぶ各社のチョコレートを食べ比べてもあまり大きな違いがなくなっていきました。

Bean to Barの起源

安価で均一なチョコレートの利点はもちろんありますが、オルタナティブな第3のチョコレート※として、Bean to Barが始まりました。
その発端は、1990年代後半に登場した、サンフランシスコのシャーフェンバーガーと言われています。(諸説あり)

また、2007年にニューヨークのブルックリンにオープンした「マストブラザーズ・チョコレート」もBean to Barの先駆けと言われています。2010年ごろにはアメリカ西海岸やヨーロッパにも広がり、世界で一大ムーブメントになりました。

※ひとつを既存の大量生産のスタイル、もうひとつをショコラティエによる高級チョコレート路線のスタイルと解釈しています。

Bean to Barの製造工程

Bean to Barによる製造の流れは、大きく分けて2つになります。
カカオ豆の原産地(Bean)と、チョコレート工房(Bar)の工程です。
大まかな流れを説明していきます。

カカオ豆の原産地 | カカオ豆の生産と加工

カカオは、北緯南緯20度以内の赤道直下の国々に生育します。

カカオ農家は、カカオを収穫しポッドを割りカカオ豆と、そのまわりのカカオの実であるカカオパルプを取り出し「発酵」を行います。
これがまずチョコレートを造る上で大事なステップです。

発酵とは、微生物が反応を起こして有機物を生成する工程です。チーズやワイン、味噌や醤油や日本酒など、多くの嗜好品が生み出されています。チョコレートもまた、知られざる発酵食品の一つです。

Bean to Barには、チョコレート製造を手がけるメーカーが生産地の農家と直接関われる利点があります。

Minimalでは、日本伝統の発酵知識と技術を基に、生産者と現地で何年にもわたり発酵実験や共同開発を行い、美味しいカカオ豆の生産に取り組んでいます。
「素材」を重視するMinimalの造り方としては、生産者との密接な関わりは欠かせないものです。

発酵が終わると、カカオ豆を乾燥させ、日本へ輸送を行います。

チョコレート工房 | カカオ豆からチョコレートの製造

カカオ豆が工房に届くと、まず品質検査と選定を行います。

そして、「粉砕」というカカオの殻(カカオハスク)をとる過程を経て、最重要とも言える「焙煎」のステップに入ります。

Minimalでは、毎回のカカオ豆の状態を見極め、火入れの温度を1℃単位、時間を1秒単位、カカオ濃度を1%単位で細かく調整し、1回ごとの最適なレシピに仕上げます。

焙煎を終えると、豆の粉砕・磨砕(まさい)工程でカカオマスに仕上げ、砂糖を調合します。

その後、調合(精錬)と呼ばれる工程で粒度を調節し、調温(テンパリング)という温度調整を通して、金型(モールド)に流し込み、冷却するとチョコレートが完成となります。

Bean to Barの基本用語集

Bean to Barをめぐるキーワードを一覧にまとめました。

Aging(エイジング)

カカオ豆の熟成工程。Minimalではカカオの研究を進める中で「ドライエイジング」の技法を追求しています。

Bean to Bar(ビーン・トゥ・バー)

カカオ豆(Bean)から板チョコレート(Bar)ができるまでの全工程(セレクトしたカカオ豆のロースト〜製造販売)を、自社で一貫管理するチョコレートの製造スタイルです。「スペシャルティチョコレート」「クラフトチョコレート」と呼ばれることもあります。

Blond Chocolate(ブロンドチョコレート)

ホワイトチョコレートをキャラメリゼして仕立てる「第4のチョコレート」とも呼ばれます。見た目がブロンド(金)色で、ビスケットやキャラメルの香ばしい風味が特徴です。

Cacao Pulp(カカオパルプ)

カカオの実(カカオポッド)を割ると、小さなカカオ豆が数十粒入っています。その周り付着した白い粘性のある果肉。これが「カカオパルプ」と呼ばれています。カカオパルプは、カカオ豆の発酵に欠かせない成分で、多くの糖分と水分が含まれています。生産地では、栄養補給のために収穫しながら食べたりすることもあるようです。
※詳しくはこちら

Cacao Husk(カカオハスク)

カカオの外皮(殻)のこと。カオハスクは、繊維質で硬く渋みが強く人が食べるには適しておらず、通常廃棄されてしまいます。しかしカカオハスクにはポリフェノールが多く含まれているため、Minimalではカカオハスクを田中農場に無償で提供するアップサイクルな取り組みを行っています。
※詳しくはこちら

Cacao Nibs(カカオニブ)

チョコレートの原材料であるカカオ豆をローストし、外皮を取り除き砕いたもの。栄養価の高いスーパーフードとしても注目されています。アイスやヨーグルトにトッピングして、ナッツのような感覚でお酒のおつまみとしてお楽しみいただけます。
※詳しくはこちら

Direct Trade (ダイレクトトレード)

チョコレート工房が、カカオ豆の生産者と直接取引をすること。単なる仕入れ先ということにとどまらず、生産者とパートナーシップを築くことで「発酵」の共同開発など品質向上に直結する共創者となり得ることはダイレクトトレードの魅力と言えます。

Dark Chocolate(ダークチョコレート)

カカオ濃度が40~60%以上の、主にカカオと砂糖、レシチンや香料でつくられた、乳製品を含まないチョコレートです。Minimalの定番フレーバーはすべてダークチョコレートで、原材料はカカオと砂糖のみでお造りしています。

Fairtrade(フェアトレード)

カカオ生産者をめぐる歴史的・構造的な問題から、多くが貧困層であるカカオ農家。持続可能に継続できるように、仲介者と公正な取引をすることをフェアトレードを呼びます。Minimalでは、フェアトレード以上の価格で高品質なカカオ豆を仕入れています。
※カカオ農園の貧困問題について

High Cacao(ハイパーセンテージ・カカオ)

一般的にカカオ濃度が70%以上のチョコレートを指します。“スーパーフード”であるカカオの栄養成分をより多く摂取できることから、身体に嬉しい効果が期待されています。
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Milk Chocolate(ミルクチョコレート)

ダークチョコレートに乳製品が入ったチョコレートです。

Recipe(カカオ濃度・粒度・焙煎情報)

Minimalでは板チョコレートに付随するレシピカードにて、カカオの製造情報を開示しています。

 CACAO RATIO | カカオ濃度
 一般的に数値が高くなるほど苦味が増し、カカオの風味が濃くなります。

 TEXTURE | カカオ粒度
 粗挽/中挽/細挽と「挽き目」が細かくなるごとに舌触りがなめらかになります。粗挽はカカオニブの塊を粗く残すことでフレーバーが強くなります。

 ROAST | 焙煎度合い
 火入れの温度と時間はチョコレートの最重要工程です。一般的に焼き時間が短い浅煎はカカオ豆の酸味が引き立ち、深煎は苦味やコクが強くなります。

Single Origin(シングルオリジン)

「単一原産国」のカカオ豆だけで製造されるチョコレート。産地ごとの個性がダイレクトに反映される特徴があります。Minimalの通常ラインではフレーバーごとにブレンドすることもありますが、「Minimal Works」などコンセプトによってシングルオリジンで製造することがあります。

Small Batch(スモールバッチ)

小規模生産を行うチョコレート工房。大量生産に傾倒していたチョコレート業界に、独立系の作り手が参入し、大企業でもショコラティエでもない、第3の選択肢として存在感を発揮しています。

Traceability (トレーサビリティ)

カカオ豆の収穫から製造・販売までの過程が厳密に管理されており、追跡が可能であること。日本では生産者の「顔が見える」ことで品質と安全性の担保が主目的と捉えられていますが、欧州では製造工程におけるエシカリティ(倫理性)に言及されることが多いです。

White Chocolate(ホワイトチョコレート)

ココアバターと乳製品、砂糖やレシチン・香料でつくられたチョコレートです。カカオマスを含まないため、色が白・クリーム色をしています。

いかがでしたか。
Bean to Barは、新しいチョコレートを生み出す起爆力を秘めた、大きな可能性のある潮流です。

Minimalは創業以来、国際的品評会で7年連続73賞を受賞(2022年末時点)するなど、Bean to Barだからできる製法により世界で認められてきました。
ぜひBean to Barが生み出すMinimalのスペシャルティチョコレートに今後もご期待ください。

MinimalのBean to Bar板チョコレートは以下よりお買い求めいただけます。


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