Minimal代表・山下が日々考えていることを、気ままにフリートークする新企画。
第1回は「ものづくり」に感じている数々の魅力についてお話ししていきます。
ものづくりの魅力に気づくきっかけ。感覚を“新たに開かせる”体験
ものづくりの魅力について、僕は「スペシャルティコーヒー」が好きなのでコーヒーにハマっていったエピソードからお話ししてみたいと思います。
コーヒーを初めて飲んだのは小学生のときですが、苦くてまずいと思いましたよね(苦笑)。なんで大人はこんなに苦いものを飲みたいんだろう?と。
それでも高校生くらいの時には、缶コーヒーのブラックを飲んでるとかっこいいのかな?と思って飲んでいたのですが、できれば美味しいと思えるコーヒーを探したいと思うようになりました。
大学生になって本を読んでいろいろな喫茶店にも行ってみたのですが、転機となったのは、2010年にニューヨークに行ったときでした。
『GOD IN A CUP』という本を見つけて、スペシャルティコーヒーの世界を知りました。スペシャルティコーヒーの御三家の一つ,、シカゴにあったINTELLIGENSIAのカフェで、クリアで酸味の強いコーヒーを飲んで衝撃を受けました。美味しい!と思ったんですね。
そのとき、ものづくりで「価値観が広がる」という体験をしました。
自分の感覚を新たに開かせるようなプロダクトと言うのでしょうか、人は感動することで幸せの尺度を増やせるのだと気がついたんですね。
最初は「かっこいい」「美味しいと思いたい」という入口でしたが、「気配を感じる」「美意識を刺激する」という新しい扉に出会いました。
“気配”の宿る、ものづくり
スペシャルティコーヒーを飲んだときに感じた「気配」とは、いいしれぬ原風景が見えると言いますか、作り手の想いや、生産地の風土や環境などが目に浮かぶような気がしました。
その時の素材、その時の環境、人の技術によって作られるものには必ず個性があります。「作り手」がそこに色濃く宿ります。これはもう理屈ではなく、「感じてしまう」ものですね。
作った人の気配を感じられるところに「食のものづくり」の凄みを知りました。
ものづくりは、本当に人の心をこめて向き合うと、何かが宿ると思うんですね。
そういうものに一つでも出会えると、人生が変わるんじゃないかと思います。
僕の場合は「食」でしたが、自分の好きなジャンルで出会えれば人生は豊かになりますよね。
たとえば、僕は出張するときには、その街のスペシャルティコーヒー屋さんを調べて飲みに行きます。そうすると自分の人生の時間が豊かになるんです。ものすごく人生の満足感を与えてくれます。
少し離れていてもわざわざ歩いて高いスペシャルティコーヒーを買いにいくわけです。でもこれがすごく幸せだなあと思えるんですよね。
合理性を超えて、自分の「好き」とか「気持ちいい」という感性のきっかけを与えてくれることが、ものづくりを本当に突き詰める素晴らしさじゃないかなと思います。
もしMinimalがそういうものを生み出せていたら誇らしい限りですが、ここには自分視点というよりも、「そういう経験をしてくれる人が一人でも増えたら、世の中に幸せが増えるだろうなあ」という思いがあります。
解像度を上げると、人生が豊かになる
僕は自分の好きなものに対して「解像度上げていく」こと自体がすごく楽しいと感じています。
谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』で、暗闇の陰影のグラデーションの中に美しさを見出すことについて語っているのですが、これも解像度の話なんですよね。
白と黒の間にある無限のグラデーションを見きわめる目や感性を持つことで、他の人には見えない美しさに気づけるわけです。深めたことで、解像度が上がり、人生が豊かになるのではないかと思っています。
一見するとムダに思える事なので、これはやはり好奇心がベースなのかもしれません。ある意味で非合理性がないと最初のとっかかりは難しいかもですが、解像度をめちゃくちゃ高くつくっているものに触れると、その解像度が理解出来なくても感性に訴える何かがあるのではないかなと思っています。
そういった意味で、僕自身は直接的に触れる事ができる、「形あるモノ」の方が、自分の五感で解像度を上げやすくて面白いと感じています。
一方で、コレクター気質ではないので、モノを集めることよりも、食べれば無くなる「食」が自分には合っていました。
食は、一期一会の「経験」そのものですよね。そういう「コト」を含めての「モノ」が好きなのだと思います。
カウンターカルチャーに魅かれる素地
そして、同じ「モノ」が好きな者同士、同じ匂いがする仲間と繋がり、その価値観を共有できるのも心地いいですよね。
Minimalにはスペシャルティコーヒー好きのスタッフが多いので、共有できる会話が多くて楽しいです。
それは、Minimalがスペシャルティーコーヒーのようなやり方でチョコレートを捉えているからだと思います。(Minimalファンの方々の中にもスペシャルティーコーヒー好きな方はきっと多いと思います)
そうした傾向からだんだん「カルチャー」は育っていくのかもしれませんね。
さらに、僕は今までにない価値観やカウンターカルチャーに魅かれる素地があるのだと思います。
カウンターカルチャーは、既存の価値観では満足しないクレイジーな人たちの美意識から生まれるわけですね。その新たな価値観を今までの既得権益にぶつけ、メインカルチャーに挑戦していくプロセスを楽しんでいるとも言えます。
ものづくりをすることは、一歩一歩モノについて「深めていく」ことです。
チョコレートやカカオに関しても、Minimal創業時(8年前)と今では全然感じ方が違ってきました。掘っても掘ってもその先の世界があるという奥深さに今もワクワクし続けています。
※【Minimal代表・山下貴嗣のそこそこ広く深く】vol.2 店舗について考えたことはこちらから