【エンジニアリングディレクター朝日将人の頭の中】vol.2「イタリア修業時代」

2023.02.11 #from Staff

創業メンバーの一人であるエンジニアリングディレクター・朝日の視点から、Minimalのものづくり思想について日々考えていることをお届けします。
※Vol.1はこちら


イタリアのマルシェで驚いた“素材”の力

前回は、イタリア修業時代に「素材本位」の料理と、「ワイン」のソムリエ研修が、今のMinimalの思想につながったお話をさせていただきました。

世界的にチョコレートの業界は(気候が寒い国々の)“ソース文化”に属するクリームや油脂をふんだんに織り交ぜた味が主流を占めており、南イタリアや地中海料理のような温暖地域の“素材本位”による発想は特殊な立ち位置となっています。

今回は、そんなイタリア時代のお話にもう少しお付き合いいただければと思います。

僕がイタリアに着いてまず驚いたのが、町の市場(マルシェ)で売られている野菜の種類の多さでした。

日本の八百屋さんを覗いてみても、たとえばトマトは多くても数種の品揃えでしょうか。しかしイタリアではトマトだけでものすごい種類の品種が置かれ、食べてみるとそれぞれに味わいが濃厚で、素材としての力を感じました。

「素材本位」という料理の姿勢に最初に気づかされたのは、このときだったかもしれません。

アーティストではなく“クラフトマン”として生きる

イタリアの2年目にヴェローナという街にある、ミシュラン三つ星のレストランで働きました。当時の最年少28歳で三つ星を取った天才シェフがいて、彼の仕事ぶりを近くで見ることができました。

お店は連日、世界中から訪れるお客で溢れ、シェフの芸術的な料理に感激して涙を流す人もいるほど、圧倒的な空間でした。そんな姿を横目で見ながら、自分は彼のような「アーティスト」側のタイプではないと感じました。

シェフである彼の家系は代々レストランを営んでおり、おふくろさんも一つ星をとり、兄が経営面を担ってアーティストであるシェフをバックアップする体制が整っていました。ここまでの環境が揃ったからこそ、28歳にして三つ星が達成されたという側面も多分にあったかと思います。

今から自分だけの努力でどうにかなるものでもなさそうだ、という自分への言い訳にもなった気がします(笑)。

このときの経験は、アーティストではなく「クラフトマン」として自分はやっていくという方向性を決めるきっかけになりました。

ワイン研修で知った価値観

最後の年にソムリエの資格をとるため、1年かけて研修を受けました。
研修といっても座学だけでなく、いくつもの農園やワイナリーに行って実習を受けます。

2週間ほど泊まり込みでブドウ畑の剪定や摘果など畑仕事を手伝い、ワインの醸造を学び、ワインショップでテイスティング講習を受けたりします。

ワインにまつわる物事をひと通り体験したことで、ワインが地元のマーケットにきちんと紐づいている様子や、循環型農業やスローフードの世界観、ワインをめぐる価値体系など、多方面から学びを得ることができ、自分の価値観に大きな影響を及ぼしました。

イタリアのワイン生産者は家族経営で運営されているところが多く、たとえワインの価格が安くても彼らが潰れない程度に成り立ち、地元の固定ファンも付いています。そういった文化を守ろうとする風土がイタリアには強く残されていると感じました。

カカオ生産者の現状と、これからの期待

Minimalを創業してからは、世界各地のカカオ農園を回りました。
イタリアと同じく家族経営で為されているのですが、「品質」を管理するところまで意識が向いている生産者はまだ少ないです。彼らが最終製品であるチョコレートを作れるようになると、品質への意識は急速に発達するだろうと思います。

これはワインを見てきた経験からも言えますし、似たようなことはコーヒー農家で起きています。20年以上前にスペシャルティコーヒーが注目を集めると、農家が自らコーヒーを飲むようになり、「おいしい/まずい」という基準がわかるようになってから飛躍的に生産技術が上がりました。

たとえば、「CACAO HUNTERS」の小方真弓さんが育てられたカカオは、みんな小方さんの味がするということがあります。やはり技術の高い作り手が現場に入って作り続けると、その人の味になっていくのですね。

カカオ農園があるのはすべて南国なので、固形チョコレートは溶けてしまうこともあり、現地ではチョコレートを食べるお客さんもいません。農家が自分たちで作りにくい環境ではあるのですが、インドネシアの農園に行ったとき、チョコレートをアイスクリームに仕立てたら喜んで食べていて、これなら観光客にも売れると気づいたことがありました。

こうしたとっかかりからでも、カカオ生産者が飛躍していくことを期待しています。

今回は、イタリア修業時代のお話を中心にさせていただきました。
Minimalはチョコレートを「ワインのような嗜好品」にしていきたいと考えています。次回は、「嗜好品」にしていくには条件やステップがあるといったお話をしてみたいと思います。
またどうぞよろしくお願いします。

※Vol.3「嗜好品としてのチョコレート」はこちら

 

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引き算の哲学から生まれた、
新しいチョコレートのおいしさ

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カカオそれぞれの風味を引き立てる。
素材と真摯に向き合うことで生まれた
新しいチョコレートの体験を。

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