【Minimalと暮らす人 Vol.4】現代アーティスト・若佐慎一さんが感じる、Minimalの自由な気風。

2022.11.11 #Minimal's Story & Report

Minimalを自分のスタイルで楽しむ方々にお話を伺う、インタビューシリーズ第4弾。
現代アーティストとして精力的にご活動される、若佐慎一さんにお話を伺いました。
※これまでの連載はこちら

スタッフが、自分の実感のある言葉で接客していること

──Minimalはどんなところを気に入っていただいていますか。

若佐さん
今のアトリエがMinimal富ヶ谷本店のそばにあり、よくお店の前を通りかかるんですね。ご近所ということもあり、利用させてもらっています。

Minimalは一口食べれば「ただのチョコじゃない!」「身体に良さそう」ということは、きっとすぐにわかると思うのですが、その前後に「文脈」がたくさんあることが他のチョコレートとの大きな違いだと思います。

たぶん、それこそが嗜好品ということですよね。
嗜好品って「美味しい」で終わるんじゃなくて、「なぜこれが美味しいのか」「他と何が違うのか」と話せるレベルの文脈がいろいろあることだと思うんです。

たとえば、味わいについても「抜けがいい」というか、風味が長く持続しますよね。
きっとお菓子でファーストインプレッションだけをパッとわかりやすくするのはやりやすいと思うのですが、“抜けがいい”ためには素材そのものがよくないと無理なんじゃないかと思うのです。

あと、全体的に仰々しくなくて親しみやすい雰囲気も好きですね。
お店の構え方から店員さんのアットホームな空気を感じます。店員さんは接客の際も自分の実感を通した言葉遣いをされていると感じるんですね。それは接客のマニュアルがないからなのだと聞きました。
店員さんに主体性や能動性があることって大事だと思うんです。僕は「サービスしてますよ!」と押し付けられるとウッとなるのですが、「向こうが自分の意思でサービスしたいんだな」と感じられると、スッと入ってくるんです。

Minimalは、気分を変えたいときに

──Minimalはどんなときに楽しまれていますか。

若佐さん
僕が自分でMinimalを買って食べるときは、ちょっと疲れていたり落ち込んだりしていて、違う空気を入れたいなと思ったときです。気分を変えたいときですね。
お店で1枚買って帰って、飲み物も取らずにかぶりつきます(笑)。特に作品制作中に食べるので、脳のエネルギー補給なのでしょうかね。いい気分でないと制作はなかなかできないので。

好きなのは板チョコレートで、FRUITYやHIGH CACAOが特に好みです。
先日、季節限定ガトーショコラの和栗を食べて、これも美味しかったですね。
こういうのがあると、普段の生活が楽しくなるのはありますよね。

だからお土産に使いやすいです。大切な人に持っていくには「特別」だと感じてもらえるものがいいですし、もし相手がいつも食べているようであれば「ああわかってるね」と思ってもらえますし。

生きている「意味」はないからこそ

若佐さん
僕は基本的に一日中アトリエで作品制作をしているのですが、制作といっても考えている時間が長いんです。なぜこの絵を描かなくてはいけないのか、なぜこのタイミングでこれを描いて発表するのか。それがわからないと虚しくなっちゃうんです。
自分の中から何かが湧き出る以前に、他者との関係によって作られると思いますので。

前提として、人は他者と関係し合って生きていますよね。
自分がこうしたいというより、今のタイミングでどうやれば自分の欲求と社会とのバランスを取れるかと考えてしまいます。

もともと、根本的には、人は生きている「意味」はないと思っていますので。
世の中で「意味」はそれぞれが見つけなきゃいけないですよね。正解や正義は揺れ動いて移ろいますから、時代が変われば正しさも変わります。ということは、根本としては「意味がない」のだと思うんです。時代や他者との関係性の中で、その都度自分の価値を認識しているんですよね。
だから、僕が一人で「自分がこう考えてこうしたい」なんていうことがなんと虚しいことかと思えてしまうんです。

これは「他者の期待に応えたい」ということとも少し違うんです。
そうなると他者の中でしか生きられなくなりますよね。そうじゃなくて、「他者があるということに自分がどう考えるか」というところに能動性があるのです。「期待を裏切る」ことも、他者との関係性で自分の欲求が働けば、やればいいんです。

「自分が信じる世界を一人一人が持っている」と感じられる


──いつからそのように考えるようになったのですか。

若佐さん
これはもう昔からです。小学生の頃から「すべてが無駄だ」と思っていましたから(笑)。
つねに「意味」を考えていたんですよね。たとえば勉強も「なんでこれをやるの?」という疑問があって。先生に聞いても「大人になればわかる」なんて言われるんですね。「なんで今言えないの?言えないってことは、自分でもわかってないってことですよね?」って詰め寄ると「うん」とか言われて(笑)。先生は自分でもわかってないことを僕らにやらせてる!ってムカついたんですよ。

何を基準にして生きていくかというルール探しはずっとしていたかもしれないです。
なんか極端に考えちゃう癖があるんですね。自分に嘘はつけないし、社会の構造からも逃れられない。逃げたいなら新しい構造のところにいくか、自分で作るかですよね。
それで中学2年のときに絵描きになろうと決めました。絵を描いているときは「やらされてる感」がなく、生きている実感があったんですね。

僕がMinimalにシンパシーを感じるのもそこなんです。
店員の方の自主性や自分の実感値を言葉で話されている点に反応したのもそこです。自分が本当にいいと思っていないなら、やめた方がいいじゃないですか。接客も商品も「あなたが好きでやってる」んでしょ?と。Minimalは「自分が信じている世界を一人一人が持っている」と感じられるのが心地いいですよね。

チョコレートを通して、Minimalの思想全体を味わう

──今後の展望をお聞かせください。

若佐さん
海外にも拠点を持てたらとは思いますね。
住む場所で、作風は絶対に変わるんですよね。なぜ絶対と言えるかというと、人間は環境の産物だからです。その影響は100%受けます。

文化も風土も違う場所で活動するのって、ある意味一から始まる感があって、めちゃくちゃエキサイティングな事ですよね。
そして、その変化の積み重ねが、新たな自分と出会うきっかけでもあったりするので、何かしらの形で自分自身の環境に変化を取り入れられたらと思っていて、その一つに、海外での拠点を持てれたらという考えがあります。

Minimalも、これだけ素材に意識を向けた商品づくりをしていると、その素材自体が繊細なために、毎回の変化があると思うんですよね。そうなると、商品の味も毎回微妙に変わると思うんです。
Minimal自身もその変化に合わせて変わらざるを得ないじゃないですか?
その変化をどう受け入れて、それを踏まえた上でアウトプットしていくか。そこにモノづくりの面白さってあると思うんですよね。
僕自身、そういう変化も大きな楽しみの一つでもあります。大変ですけどね……(笑)
そして、そういう事を繰り返していくと、その変化し続ける中で、変化しないモノも現われてくると思うんです。それがある種の普遍だと思っていて、その普遍を見つけたり、表現できた瞬間とか本当に気持ち良いですよね。
Minimalにとっての普遍がどういう所にあるのかを探ったりするのも楽しみの一つです。

こうして話していると、Minimalは自分の人生観と照らし合わせることが多いですね。そうすると、瞬間ではなく文脈で見られる。人間って文脈の生き物じゃないですか。点だけで見ているわけではなくて歴史がありますよね。だから、たとえ今は足りてないところだって、いつか克服するだろうと思えるんです。

「チョコレートが美味しい」ことに加えて、店員さん一人一人の主体性あるふるまいや、ブランドとしてチャレンジングな姿勢にやっぱりシンパシーを感じます。
大げさにいえば、無意識のうちにチョコレートを通してMinimalの思想全体を味わっているという感じでしょうか。だからずっと買っているんだと思います。

若佐慎一さん

大学で日本の伝統画法を学び、学部卒業制作を同大学の首席に当たる「買い上げ」となる。
卒業後、月刊美術主催公募展「デビュー」にて準グランプリ受賞。
日本の風土と宗教観をテーマに、漫画やゲーム、アニメの特徴とされる要素を作品内に取り込み制作する。
活動は国内外問わずその場を広げ、京都伝統工芸の「長艸繡巧房」に原画提供や、NYのファッションブランド「sawa takai 」、アイドルグループでんぱ組.incの相沢梨紗が手がける「MEMUSE」とのコラボ、そして、メディアアーティスト落合陽一、アーティスト串野真也と共にファッションブランド「凄い若い」を立ち上げるなど多岐にわたる活動を見せる。
栃木県立美術館、広島市立大学、円覚寺塔頭龍院庵、作品所蔵。
https://www.instagram.com/shinichiwakasa/

 

2023年2月10日〜16日、東京・千代田区のkudan houseにて個展を開催予定です。

https://kudan.house
詳細が決まり次第、Instagram等でお知らせします。

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