たっぷり9種各2枚入りで、ギフトにもおすすめのチョコレートのアソートセット「Works」。
毎年バレンタイン・ホワイトデーシーズンにテーマを変えてお届けしている、職人達の作品集(Works)です。
今年のテーマは「Engineering(エンジニアリング・製法技術)」。
カカオ豆からチョコレートができるまで一貫して手掛けるMinimalの職人達は日々、美味しいチョコレートを造るために1分、1度、1μ(1000分の1ミリ)単位で微細に味わいを調整し、試行錯誤しています。
今回は、チョコレートが完成するまでの工程により、豆の表現や表情がどのように変わるかという「Engineering(製法技術)」の差異に着目しました。
開発担当は、Minimal創業メンバーでもあり、チョコレートの味わいを決めるエンジニアリングディレクターでもある朝日。その開発の舞台裏をご紹介します!
開発担当者が語る、Minimal Works 2022「Engineering」
今回の開発責任者であり、Minimalエンジニアリングディレクターを務める朝日将人が今年のWorksに込めた考え方を、自身のバックボーンを振り返りながらお話しします。
まるでエンジニアの「頭の中をのぞく」ように。
朝日
私はもともと大学でシステム工学を学んでいました。Minimalで提示しているINPUTとOUTPUTという考え方は、そのときの経験がベースにあります。
まず「こんな味が作りたい(OUTPUT)」というゴールを設定し、「どんな豆が手に入るのか(INPUT)」という素材を基に、その間を埋めていくのがエンジニアの仕事です。「目的」に向けて「技術」を使うということです。
Minimalでは世界中のカカオ豆を入手していますので、日々「カカオ豆のキャラクター分析」をしています。どんな可能性があるかを広げて考え、その後で「自分たちがほしい味わいならこれが適切」「このキャラクターを引っ張りたいならこういう手法を採用する」という形で技術を選びます。
今回のWorksは、「6つの製造工程」という切り口で9種のチョコレートをご用意しました。
カカオ豆がチョコレートとして完成するまでに重要な分岐となる6つのステップを切り出しています。
昨年の「Flight」というテーマが「世界各地のカカオ豆」のバリエーションを楽しむものであるとすれば、今年は「Minimalの製造過程」のバリエーションを楽しんでいただくものです。
朝日
まったく同じカカオ豆でも、違うステップでどんどん味が変わる面白さを感じていただけたらと思います。これまでMinimalが提示してきた面白さは「産地によって味が違う」ということでしたが、今年はさらに踏み込んで「表現手法で味が違う」「産地以外のラベリングで楽しむ」という提案です。
「チョコレートってどうやって味が変わってくるんだっけ?」ということを知っていただけたら嬉しいです。
Minimalのエンジニアが素材とどう向き合い、製法をどう調整しているかという、まるでエンジニアの「頭の中をのぞく」ような体験を、ぜひ今年のWorksではお楽しみください。
また、毎年のWorksに収めるチョコレートは、1年で学んだことや実験したことなどをまとめた集大成のような位置付けになっています。今回も新しい製法技術に果敢にチャレンジしています。
朝日
「AGED」や「EXPERIMENTAL」(レイヤード)は、1年で新たにトライした技術を取り入れました。自分の気質がつねに新しいものに惹かれ、カウンターやオルタナティヴなものを求めてしまうので、この2枚には反映されていると思います。お客さんの反応がどんなものになるか非常に楽しみです。
エンジニアリングは、実験性と再現性。
朝日
システムエンジニアから料理の道に入り、3年くらい経って、28歳でイタリアにコックの修行に行きました。
最初に驚いたのは市場の野菜が美味しいことでした。味の濃さが全然違い、そこで初めて素材というINPUTの存在を意識しました。イタリア人は素材に分析的な目を向けていることも知りました。あれだけの種類の野菜を売場に置いているということは、それだけの役割を持たせているということです。次第に素材を重視した料理に目覚めていきました。
また、料理を化学的に解明して新たなアプローチを探る「分子ガストロノミー」の潮流は、自分には馴染みやすかったこともあり、素材と製法をエンジニアリングの考え方で捉えるようになりました。
イタリアにはコックとして修行に行ったのですが、いちばん得意だったのがコーヒーを淹れたりお菓子を作ったりすることでしたので、バールのカウンターに放り込まれることになりました。そこでワインに出会い、イタリア滞在の最後の年に試験を経てソムリエ資格を取りました。
ワインの要素分解をして「そこで何が起きているんだっけ?」と考えたことが今につながっています。
Minimalの「エンジニアリング」という向き合い方は、新しいものを定常的に造り出していくための基本となっています。分析手法と製法技術を高めることで、新たな実験をし、再現していくことが可能になります。
そこにはエンジニアリングディレクター朝日のキャリアが色濃く投影されています。
朝日
スペシャルティコーヒーはアメリカで生まれた文化ですが、提唱した一人がワインに精通していたことから、ワインの分析的手法を持ち込み「何がよいものなんだっけ?」ということを定義しました。
作る人間と使う人間が価値観を共有し、かつオークションシステムを作って利益が分配される仕組みが回ったことまで含めて、スペシャルティコーヒーの美点だと捉えています。それと同じようなことがチョコレートの世界でも起きるといいなと期待していますね。
エンジニアか、アーティストか。
朝日
自分の職人としての真の理想は「アーティスト」です。
イタリア修行時代に3つ星のバールにいたのですが、そこには28歳で3つ星を獲ったとんでもないシェフがいました。その人の発想は毎日驚きの連続でしたし、お客さんが料理に感動してテーブルで泣いている姿も見ていました。客単価は5万円以上するような別世界でしたが、そこにアーティストがいてその価値が提供されているのは理想だと感じました。
食に携わる人間として、ものをつくる人間としてどうあるべきか、という姿を教えられましたが、一方で、自分自身がそうはならないだろうということも分かっていました。自分は美味しいものを(誰でもとは言わないまでも)きちんと再現できるように体系立てるエンジニアでありたいと思っています。
自分が目指すべきは優秀な技術者であることで、「提示される価値がどうすれば出来上がるんだっけ?」というところを実現していくことだと捉えています。
今、自分がMinimalに持ち込んでいる価値観や方法論は造り方のヒントを与えているに過ぎませんが、今後のMinimalはもっと価値観が広がっていき「アーティスト」のような人も出てきてくれると嬉しいです。ゴールの理想を持ち、自分の主張があり、新しいものを作れる人がいいですね。
今回の「AGED」や「EXPERIMENTAL」では新たな挑戦をしていて、そこにアーティスト的な部分への憧れが出ているのだと思いますが、自分がアーティストなのかと言われたら否定的ですね。
6つのステップを9種の味わいに
今回の9種は、豆の選定からチョコレートができるまでの6つのステップごとに、9種類のチョコレートの味わいの食べ比べができるよう構成しています。
ステップ1:SORCING BEANs(素材調達)
Minimalではカカオ農家さんを直接訪れ、目利きのうえ、質の良いカカオ豆をフェアトレード価格以上の値段で買い付けています。ときには現地で発酵、乾燥の過程を農家さんと一緒に改善することも。保管状況や輸送の手配なども行います。
ステップ2:AGING(熟成)
日本に到着したカカオ豆が、期待通りの風味か否か確認します。(大抵期待通りにはいきません)温度や湿度、容器の形状などを検討して保管し、熟成させ味わいを調整します。
ステップ3:ROSTING NIBs(焙煎)
最も派手なステップかもしれません。豆を細かい形状のニブにした状態で火入れしていきます。コーヒーのように浅煎、中煎、深煎の大きく3系統にわかれます。
ステップ4:GRINDING MASS(磨砕)
ローストしたニブは、可能な限り速やかにカカオマス(カカオニブを磨り潰し、砂糖などを入れる前の状態)、チョコレートに加工します。一般には臼のような機材でペースト状にします。細挽・中挽・粗挽と大きく3つに分類されます。
ステップ5:MIXING(混合)
目指す味わいにむけて素材を混ぜます。シンプルな作業ですが、センスが問われる部分です。そもそも混ぜるものは砂糖で良いのか?砂糖ならば何の砂糖か?割合やタイミングは…?など多くの要素を検討します。
ステップ6:MOLDING BAR(充填・型に流す)
チョコレートを型に流し込み固めていきます。ただ流して固めるだけ…?と思いきや、ここにも多くの可能性があります。
どのような層の構造にするか、どのような型に固めるか、何種類のチョコレートを流すのか…?
9種それぞれの味わい
①NUTTY(SOURCING BEANs):プラリネペーストのような風味
素材調達に着目した1枚。創業当初から使っているカリブ海の島国、ハイチ産カカオ豆を使っています。わかりやすいナッツのようなフレーバーを感じていただけます。この豆を使った製法違いのチョコレート(⑤と⑧)もセットに入っていますので、ぜひ食べ比べてお楽しみください。
②FRUITY(SOURCING BEANs):トロピカルフルーツのような風味
少し珍しいタイ産カカオ豆を使っています。スペシャルティコーヒーが盛んになってきたのに合わせ、アジアの国々でも良いカカオ豆が採れてきています。
①のカカオ豆はクリオロ系と呼ばれる品種ですが、こちらはトリニタリオという品種です。カカオと砂糖という原材料は同じなのに、種類や国によって全く味わいが異なるということを、①と②を食べることで体験していただければと思います。
③CHOCOLATY(SOURCING BEANs):スイートチョコレートらしい風味
ガーナ産カカオ豆を使用。スパイスのイメージに特徴があります。チョコレートの味わいを分解していくと甘い、苦いの他に、シナモンのような香りなど様々な香りが複合してチョコレートらしい味わいをつくっていきます。
ペアリングで楽しむのもおすすめです。③には渋谷にある「GEN GEN AN幻」さんのレモングラスほうじ茶をあわせるのがおすすめです。レモングラスの香りがチョコレートのシナモンのようなスパイス感(ホットスパイスではなく、バニラやアニスなどの甘いスパイスの風味)を引き立てます。
チョコレートの余韻が伸びるよう、チョコレートを食べたあとにお茶を一口飲んで楽しむのがおすすめです。
④AGED(AGING):グレープコンポートのような風味
定番フレーバーのアルアコでも使用しているコロンビア産のカカオ豆を使っています。
定番のアルアコはリンゴや梨のようなイメージをもつものが多いのですが、熟成することで、もっと色の濃いブドウのような味わいになることを目指しました。
余談ですが、コロナによってより磨かれた(磨かざるを得なかった)技術のひとつがこの熟成です。コロナによって輸送が乱れ、船がとまり豆の味が変わってしまうことがありました。現地での状態から大きく品質が変わってしまった豆を、どのように目指す良い味わいに転換していくかという点をかなり試行錯誤することで、より熟成の技術を磨くことができました。
⑤LIGHT-ROAST(ROASTING NIBs):飴がけナッツのような風味
①に使用しているハイチ産のカカオ豆の火入れを短く、浅煎としています。
①は飴がけのナッツのような味わいですが、こちらは黒蜜のような香りも感じていただけるかと思います。浅煎・中煎・深煎は、焙煎の温度と時間の掛け合わせで調整をしています。
⑥ROUGH-GROUND(GROUNDING MASS):青リンゴのような風味
粗挽で仕上げています。大きいと1mmくらいの粒子が残ります。
⑥は②と同様のカカオ豆を使っていますが、挽き方は異なります。②は中細挽きくらいですが、⑥は粗挽です。粗挽にすることによって、青りんごのような味わいを感じていただけるかと思います。
⑦BLENDED(MIXING):赤ワインのような風味
③のガーナに、ブラジル産カカオ豆をブレンドしました。
ブラジル産のカカオ豆を混ぜたことにより、ハーブのようなイメージを感じていただける味わいになっているかと思います。
ブラジル産カカオ豆だけでチョコレートを造ると、渋味を感じる美味しいとは感じることができない味わいになってしまいます。しかしブレンドすることで味わいを調整し、チョコレートとして楽しんでいただけます。
代表・山下「まるでラベンダー畑にいるような気持ちになる味わいです」
⑧85+(MIXING):皮付きナッツの風味
①と同様のハイチ産カカオ豆を使っていますが、カカオ濃度を85%と高くしています。そうすることで味わいも違った印象となります。ぜひ①と⑤、そしてこの⑧の3つを食べ比べてみてください。
⑨EXPERIMENTAL(MOLDING BAR):チェリーソテーのような風味
液体状のチョコレートを型に入れるタイミングについて着目しています。型に入れる際、2種をわけていれることで、2層構造としています。
今回は④で使っているコロンビア産の豆とマダガスカル産の豆を使っています。クランベリーのような味わいを感じていただけます。これを2層とせず混ぜてしまうと、クランベリーの印象がはっきり感じられなくなります。そのまま食べるのはもちろん、舌で溶かしながら食べたり、最初に舌に載せる面を変えるなどしてお楽しみください。
サブスクサービス「CHOCOLATE ADDICT CLUB」2月でお届け他は、富ヶ谷本店のみでのお取り扱いになります。
ぜひ一度ご体験ください。
Worksの開発秘話について、インスタライブでも開発・朝日と代表山下が語っていますので、ぜひご覧ください。
Minimal Works:Engineering
商品詳細および販売情報
【価格】5,940 円(税込)
【内容量】1箱あたり: 9種×2枚(計18枚)
【販売店舗】富ヶ谷本店