「東京×クラフト」のパイオニア『T.Y.HARBOR BREWERY』職人対談編/ブルーマスター阿部さんと語る、『カカオ×ビールの再構築でうまれた「Cacao Sour Ale」』

2018.06.26 #Minimal's Story & Report

1997年。「クラフト」がまだ聞き慣れない頃から東京・天王洲でクラフトビールをつくり続けている人気の醸造所併設レストラン「T.Y.HARBOR」。

Minimalが創業間もない2015年からご一緒させてもらっている「カカオ×ビール」コラボレーションは、2018年夏に第三弾をリリースします。

 

今回は「T.Y.HARBOR BREWERY」創業時からのメンバーでブルーマスター(醸造責任者)の阿部さんと、Minimalのエンジニアリングディレクター朝日との対談をお送りします。

 

 

新作ビールは爽やかな「Cacao Sour Ale」

- 目下仕込み中ですが、第三段となる今回のビールはどういった風味になりますか?

 

阿部:テーマは2つで「夏のビール」と「"カカオ×ビール"の再構築」です。

カカオとビールというと黒くてカラメル感のあるビールの想像が出来ちゃうじゃないですか。

お客さんが簡単に想像出来るものを作りたくないんですよ。(笑)

スタウトとかの黒ビールじゃなくて夏に飲みたいものにしたかったですし。

朝日さんと話をして今回はカカオパルプ(カカオの果肉)+フルーツ系フレーバーのカカオニブでいこうということになりました。

阿部:カカオパルプを使うのってカカオからチョコレートをつくるMinimalさんらしいし、新しいなと思って。

ビールとしてはサワーエールをつくります。

 

- 醸造途中のビールですが、今時点ではどういった印象ですか?

 

阿部:カカオパルプは入れていて、この後の熟成期間にカカオニブを香り付けで加えます。

 

朝日:確かにサワーエールですが、酸がとても柔らかくてびっくりします。

 

阿部:そうですね、カカオパルプがトロピカルなので柔らかくなりますよね。まだ酵母が残っていますが、もっとパッションっぽくなると思います。

 

- サワーエールってあまり聞かないのですが、どういった特徴がありますか?

 

阿部:ベルギーとかアメリカにはサワービール専門があったりします。

 

朝日:わざわざ飲みたいビールですね。個人的に好きで飲みます。

フルーツが入っているものも多くてベリー系が多いですが、今回トロピカル系になるのはおもしろいと思います。

カカオニブを加えなくてもこれで十分じゃないですか?(笑)

 

阿部:いや、今回はカカオ自体をもっとビールで表現したいんですよ。

 

 

チョコレートの風味ではなく、チョコレートの成り立ちを表現する。 一から設計し直した「"カカオ×ビール"の再構築」。

 

- 2つ目のテーマの「"カカオ×ビール"の再構築」ですか?

 

阿部:そうです。カカオがフルーツからチョコレートになるまでのプロセスをビールで体験してもらいたいなと。そういうイメージです。

カカオパルプを使ったと言ったんですが、実は一度乳酸発酵させてから使っています。

実際、カカオも産地で発酵させるじゃないですか。

 

朝日:そうですね、発酵することでカカオ豆の複雑なフレーバーが生まれます。

しかしなんとまぁ、そんなことをしていたんですね。

阿部:このあと熟成の間にタンザニアのカカオニブを漬けます。

最初にカカオパルプとタンザニアカカオのシトラスとかトロピカル系の香りがきて、鼻に抜けるアフターで、ローストした香ばしいカカオがチョコレートっぽい香りになってビールに付きます。

そうすると、果実としてのカカオのトロピカル感から、チョコレートっぽい香りまでを楽しめるはずです。

 

朝日:確かに。(笑)

 

- カカオの使い方として今回のビールからヒントは何かありますか?

 

朝日:いや、僕はチョコレートを作る時、チョコレートのためにカカオを使うというよりも、フルーツを料理して何かをつくる感覚です。なのでフルーツとしてのカカオをビールに使うのは、共感が出来るところです。

 

阿部:2015年からMinimalさんとはビールつくっていますが、はじめは香ばしいウィートエールにカカオの香りをのせるところから始まりました。

今回は3回目なので、「美味しいビールを作る」という目線で「カカオ×ビール」を一から設計し直しました。

お客さんがカカオ×ビールから想像出来ない、でも素材のおもしろさを知ってもらうビールですね。

 

朝日:香ばしさや複雑さを足すという意味ではコロンビア(シエラネバダ産)のカカオみたいなベリー系でスパイス香のあるものもおもしろそうです。

 

阿部:複雑さを出すのはビールとしては良いのですが、今回はカカオのフルーツ感をまろやかなトロピカルな風味で表現したいと思ったんです。

 

朝日:カカオニブを加えたものも気になりますが、やっぱり今のカカオパルプだけのままでも美味しいですよ。(笑)

 

阿部:もう一つチャレンジして、カカオニブを入れてサワーエールに期待される複雑さを出したいんですよね。(笑)

 

- 乳酸の効いた爽やかでトロピカル、でもほのかに香ばしいビールが楽しみです。飲み方のおすすめはありますか?

 

阿部:野菜とかカルパッチョとかにあうんじゃないですかね。

 

朝日:食前に飲んでも良いし、食後のデザートとも良さそう。それよりも昼から飲むのが一番合いそうです。

 

阿部:この前、ビールのイベントに出てたんですけど皆さん昼間はあまり飲まないんですよね。背徳感のあるビールが美味しいのに。(笑)ぜひ昼から飲んで欲しいです。

実は僕個人は食べ合わせとかは気にしていなくて、ビールはビールで飲みたいものを飲み、食事は食事で食べたいものを食べる。好き勝手飲んでもらえたら嬉しいですね。

 

「カカオ×ビール」、次のテーマはカカオの起源?

 

- 今回の第三段は「夏のビール」と「"カカオ×ビール"の再構築」がテーマでした。

これからはどういったことをしてみたいですか?

 

朝日:今回の「Cacao Sour Ale」を20年とは言わなくても3-5年熟成したのを飲んでみたいです。ちょっと気が長いですが。

 

阿部:いやーそれは美味しいだろうな。(笑)サワーエールの特徴はうまみです。長期熟成させるとスープみたいになるビールもあるんですよ。

 

- 熟成させた「Cacao Sour Ale」はどんな風味になるんでしょう?

 

朝日:実は想像は出来ていて。(笑) フルーツであるカカオの要素が増えることで、複雑になるし熟成して美味しくなるイメージがとてもあります。

 

阿部:今回はパイロットブルワリーでの少量生産でしたが、いつかメインでつくってバレルエイジさせてみたいですね。コニャックとかウイスキーとかの樽で。

あとチリを使ってみたいんですよね。南米だとビールに使ってたりするんですよ。

 

朝日:あーいいですね。カカオはそもそもショコラトルといって、16世紀にヨーロッパに渡る前の中南米では唐辛子やペッパーとかのスパイスと混ぜた飲み物でした。ショコラトルのビール、おもしろそうです。

 

阿部:やっぱり皆が想像できちゃう香ばしいスタウトみたいのは、あえてやらなくても良いじゃんと思ってしまうんです。

少量の仕込みが可能なパイロットブルワリーが出来たので、冒険的なチャレンジをどんどんしたいんですよね。

阿部:逆に、ディープローストのカカオとミルクを入れたビールとかどうですか?ニューイングランドスタイルにガッツリ焼いたカカオニブを入れてみたいです。

 

朝日:それは甘いチョコレートをかじったビールになりそうですね。(笑)チョコレートスイーツのビールみたいな。

冬なら温かいビールも良さそうです。ホットチョコレートスタウト。(笑)

 

阿部:そこにチリを入れて。(笑)

 

- 話は尽きませんが、次のコラボレーションビールも楽しみです。今日はありがとうございました。

 

□商品・販売情報

Cacao Sour Ale

発売日:7月1日予定

取扱店舗:天王洲T.Y.HARBOR、原宿SMOKEHOUSE

     Minimal富ヶ谷本店(カフェ提供のみ)

 

■JOURNAL 「東京×クラフト」のパイオニア『T.Y.HARBOR BREWERY』

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