【Minimal代表山下のカカオジャーナルVol.1】ガイドブックに載らないカカオ農園のリアルなお話

2018.01.08 #from Cacao Farm

チョコレートは新しくなると言うお話

皆さん、明けましておめでとうございます!山下です。私はカカオ豆の買付のためカカオ産地に毎年3か月~4か月滞在します。加えて、ヨーロッパ、アメリカのチョコレート消費の先進国にも様々な機会で訪れます。そんな私がリアルに肌で感じ、経験したカカオとチョコレートの最前線をお伝えするために2018年から本連載をスタートします。Minimalのビジョンである「チョコレートを新しくする」の実現に向けて、世界で今この瞬間にフツフツと湧き上がっている新しいチョコレートやカカオの胎動を私自身の言葉でお伝えする本連載の名前を「カカオジャーナル」としたいと思います。私が感じた新しいカカオやチョコレートの可能性をざっくばらんに楽しくお伝えできればと思います。ぜひお付き合いいただければ嬉しいです。

 

ガイドブックに載らないカカオ農園のリアルなお話

2017年も多くのカカオ農園に訪れました。まだまだ私たちのようなファインカカオと呼ばれるプレミアムカカオのバイヤーは世界的に見ても少ないことも多く、カカオ農園に行くと、面白い事がたくさん起こります。記念すべきVol.1はそんなガイドブックには載っていないカカオ農園のリアルな話の中で、思い出深いエピソードを紹介したいと思います。

 

Episode 1:「俺のところ(農園)にも寄ってけよ、いいカカオあるぜ!」的なお話

2017年8月に訪問したフィリピンでの話。フィリピンは3年前から通っている関係深き土地。最初の発酵実験もこの地でやらせてもらいました。スペインの植民地時代にカカオの原産地と言われるメキシコとの直接貿易もあり、古くからカカオ栽培はもちろん、チョコレートの消費の歴史もある国です。

最初から少しだけ本題とはそれますが、17年は色々バタバタで、渡比が8月になってしまいました。実は8月はカカオクロップとしては閑散期に入るので、ベストのタイミングではないのです。農園もカカオポッドがまばらでした。やはり農作物はベストシーズンも見極めながら行かないといけないと、大いに反省しました。今年以降は改善したいと思います。

 

日程調整で少しミスりましたが、17年は8月に行ってきました。最初の予定では、訪問する農園は数カ所の予定でした。しかし、いざ行ってみると、なんと結果として20農園近くを訪問することになりました。元々予定していた訪問の5倍近くを訪れることになりました。

なぜそうなったかと言うと・・・

どこからか噂を聞きつけたりして、「俺のところ(農園)にも来い!俺のカカオは良いぜ!」的な感じであれよあれよという間に連れまわされ(笑)、

結果として3週間くらいの滞在で訪れた農園は20農園近くになりました。

きちんと質を見極めて、大手企業が使うマーケット価格とは違った独自の値段で買うという事が口コミで広がったみたいです。

さらには数年前から通っているため知り合いが多くなり、噂も広まり、多くの人から声をかけてもらえるようになりました。ありがたいことです。もっと多くの産地でこの状態になりたいなーと思いながら、同時にまだまだカカオ農家にとっては売れる選択肢は大手企業のみで少ないという現状なのだと強く危機感も覚えました。

ただ、冷静に考えてみると日本なら「なぜ私たちの渡航情報がダダ漏れなのか」と、コンプライアンス問題になりそうなくらい知らない人に呼ばれたなと冷静になると思いました(笑)

 

Episode 2:「カカオ栽培にもビオ農法あるんだぜ!」的なお話

2017年4月に訪問したドミニカ共和国でのお話。カカオ栽培にバイオダイナミック農法を採用しているという農園に訪問しました。

少し話はそれますが、ドミニカでは、大きくカカオ豆の2種類に大別して、価格が全く違います。

サンチェス:発酵をしないで主に国内消費で消費されるカカオ豆

エスパニョール:発酵をきちんとしたオーガニックカカオ豆

 

今回のビオ農法を採用している農園は当然②のエスパニョールを扱っている農園でした。一番驚いたことは、木の高さ。管理されている農園ではカカオの木は通常2m~3m程度に剪定されます。ほっておくと10m程度まで大きくなるのですが、2m程度の高さに剪定する事で人の手が届くところにカカオポッドが生えるので、収穫しやすく、収穫時の労力を少なくするためです。しかし、ビオ農法を採用している農園は、剪定は必要最低限(というかほとんどしない)で自然な状態を保ちます。そのため、これまで訪問したどの農園よりもカカオ木が高い。カカオポッドを収穫する際も、5mくらいの長いナタを使ってポッドを落としていました。これは収穫大変そう・・・。

実際に「収穫大変じゃないないの?」と聞いてみると、

「大変だけど、ビオ農法でオーガニックのカカオ豆だせ!」と自信満々に言っていました。

彼らの中で、ビオ農法で育てる事やオーガニックだと市場で高く売れるということが暗黙の前提としてあるように感じました。やはりカカオは欧米市場への輸出が主であり、欧米はオーガニックということは付加価値になります。ただ、個人的な感想としてはオーガニックであることが必ずしも美味しさの保証ではないと思うので、なかなかバイヤーとしては悩ましいところです。

また他の農園との違いとして面白かったのは、農園に入ったときの湿度の違いです。通常2m程度のカカオの木のカカオの農園は湿度がこもって、じめっとするのですが、今回の農園は木が高く、風が通るので、農園特有のじめっと感がとても少なく、気持ちよい。これはとても不思議な体験でした。

 

Episode 3:「先進国でもカカオできるぜ!」的なお話

※出典:Wikipedia 「UNDP人間開発指数(2015)」 濃い色の地域が開発指数が高い

2017年は沖縄と台湾の農園にも訪問しました。そうです、日本や台湾といった先進国でもカカオの栽培が始まっています。(台湾がそもそも国なのか、先進国とは何かという事は国際指標ごとに定義が違い曖昧ですが、私見として経済発展や訪問した感想として先進国と定義していますので悪しからず)

日本で有名なところでは、小笠原諸島と沖縄本島でしょうか。日本人がカカオの栽培に挑んでおり、もう少しで国産カカオ100%チョコレートも皆さんに届くのではないでしょうか。地理的な事でいうと沖縄や小笠原諸島は少し寒暖差が適していない部分もありますが、栽培は可能です。温度もさることながら、日本における一番の問題は台風です。台風が来るとどうしてもポッドが落ちたり、幹が折れたりします。したがって日本ではハウス栽培が主流ですが、訪問した沖縄の農園は露地栽培にも挑戦していました。頑張って欲しいです。楽しみですね。

また台湾も実は南の方の屏東(ピントン)と呼ばれる地域でカカオ栽培が始まっています。まだまだカカオ栽培を始めた歴史は浅いのでこれから品質を上げていく段階ですが、先進国で行うため栽培環境を整えるという事が比較的容易で今後の大幅な品質改善に期待大です。ただ、台湾の問題は人件費の高さです。これは日本にも当てはまる話ですね。どうしても人件費が高く、最初からカカオ豆の価格が高くなってしまいます。そのため、質に対してのカカオ豆価格のギャップがどうしても埋めれない期間があります。まさに今その感じだと感じました。この期間を乗り越えていく事がとても大事ですね。応援したいです。

語りだすとまだまだエピソードはたくさんあります。一つとして同じ農園はなく、農園に行く事はとても多くのドラマをMinimalにもたらせてくれます。そして、創作意欲やモチベーションを与えてくれます。Minimalというブランド名には、「チョコレートの最小限であるカカオを表現する」という意味合いを込めています。そのためには農園に行き、パートナーと言える農家と出会い、信頼関係を結んでいき、まだ見ぬよりよいカカオを一緒につくっていく事が必要不可欠です。2018年も一つ一つの出会いを大切にもっと多くの農園に訪問して、まだ見ぬカカオ豆に出会っていきたいと思います。続報をご期待ください。

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