【Minimalカルチャー対談】ONIBUS COFFEE代表・坂尾篤史さん(後編)「カッコよさを失わず拡大するクラフトスタイルの秘密」

2024.05.11 #Minimal's Story & Report

2012年に創業し、日本のスペシャルティコーヒーの草分け的存在であるオニバスコーヒー。

スペシャルティコーヒーに多大な影響を受けているMinimal代表・山下が、オニバスコーヒー創業者の坂尾篤史さんと海外展開やパーマカルチャーについて語り合いました。

※前編はこちら

 

あくまで自然体

山下
オニバスコーヒーの開業当時「スペシャルティ」という概念はあったんですか?

坂尾さん
なかったですね。「バリスタ」くらいだったと思います。

山下
その後、「サードウェーブ」ブームが来ますよね。

坂尾さん
最初はその言葉も分からなかったんですよ。

インテリジェンシア※1とかスタンプタウン※2のコーヒーは飲んだことがあって、超うまいと思ってて、こういうコーヒーを作りたいなとは思ってましたけど。

雑誌「BRUTUS」で特集を組む話がきてうちを取り上げてくれて、それでブームを知ったという感じでした。
※1 スペシャルティコーヒーのパイオニアと称されるアメリカシカゴ発のコーヒーショップ
※2 アメリカのコーヒー業界のサードウェーブの代表格とも評されるポートランド発のコーヒーショップ

山下
そうだったんですね。

坂尾さん
当時「BRUTUS」が見つけてくれた理由を自分なりに考えてみたんですけど、ロン毛でチェックのシャツを着てタトゥが入ってて、DIYもしてて。なんかサンフランシスコっぽいじゃないですか。だから一番それっぽかったのかなと(笑)。


山下

面白い(笑)。
その当時からコーヒー豆の買い付けで生産地には行かれていたんですか?

坂尾さん
2014年からですね。中米のコスタリカとグアテマラに行きました。

山下
ああ、僕の中ではオニバスさんはグアテマラのイメージがあります。昔飲んで衝撃を受けた記憶があるので。グアテマラってどこだよと思いながら(笑)。

やっぱり産地には行きたいという気持ちは初期からあったんですか?

坂尾さん
そうですね。なんか漠然とですけどね。まあバックパックしてたので、単純に「僻地に行きたい」っていう(笑)。

山下
いいですね(笑)。「サードウェーブだから産地に行く」みたいなことじゃなく、もう自然なんですよね。なんか今につながってますね。

坂尾さん
たしかに変わってないですね。

山下
それが一番かっこいい。

坂尾さん
そう言ってもらえると嬉しいです(笑)。

山下
僕も良質なカカオ豆を求めて産地を訪れるのですが、コーヒーとカカオは同じ産地でも標高が違うんですよね。

カカオは低地なので暑くてじめじめしてて。コーヒーは高地で涼しいじゃないですか。あれ、羨ましいと思ってます(笑)。

坂尾さん
たしかに。コーヒー農園はちょっと寒いくらいですもんね。


つながりで広がる海外店舗 

山下
2店舗目になる「ABOUT LIFE COFFEE BREWERS」※は、開業から何年後ですか?
※ONIBUS COFFEEのコーヒースタンド店

※ABOUT LIFE COFFEE BREWERS道玄坂店

坂尾さん
2014年なので、2年後ですね。

山下
そんなに早かったんですね!あれも衝撃的でしたね。渋谷のあの狭小物件の活かし方はセンスしかないですよね。

坂尾さん
お金がないから大きい物件を借りれないんですよね。それでも都心の真ん中で出したかったんですね。渋谷で出したかったんです。

当時、まだ渋谷駅の東急東横線ホームが2階にあったころ、駅直結のDEAN AND DELUCAがあって。それがすごく小さいスペースでコーヒーを出してたんですね。その感じを参考にしてやり始めました。

山下
今、海外店舗が3つありますよね。どうして海外に出そうと思ったんですか?

坂尾さん
ABOUT LIFEもそうなのですが、共同経営で始めてまして。

お店をやりたいという人との出会いがすべてです。ベトナムに出したときは、海外1店舗目だったのでテストでやろうみたいな感じで、とりあえずやってみたいなと思いました。特にフィーの契約もせずに。

山下
考え方としてはフランチャイズに近いですね。

坂尾さん
そうですね。

山下
新店舗でコラボのお話とか来ないですか?一緒に出そうみたいな。

坂尾さん
たまに言われることありますけど、やったことないですね。

山下
海外でMinimalと一緒にやりましょうよ(笑)

坂尾さん
いいですね(笑)。

山下
日本のチョコレートブランドで海外に出ているところって少ないんですよ。

海外で有名になったショコラティエが日本で出すのはたくさんあるんですけど。Minimalも次の10年で海外展開をちゃんとやりたいと思っています。

環境も人も、多様性

山下
Minimalでは「Minimal Collective Impact Report」という報告書を昨年公開しました。

オニバスさんは「サスティナビリティレポート」で、環境問題への啓蒙を始められていますよね。その取り組みについておうかがいしてもいいですか?

坂尾さん
オーストラリアにいたときに「パーマカルチャー※」を知ったことがスタートでした。

ファーマーズマーケットで、ヒッピーみたいな雰囲気の日本人女性が出店してて話してみたら、大学で「パーマカルチャーを研究してる」と聞いて。なんだそりゃと思って。
※パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)・農業(アグリカルチャー)・文化(カルチャー)を組み合わせた造語。持続可能な農業で人と自然が共に豊かになる関係を築くデザイン手法。

山下
そうなんですね(笑)。

坂尾さん
それからずっと気になっててコロナ禍で時間ができたので、ちゃんと勉強してみようと思い立ち、相模原市で日本のパーマカルチャーの第一人者の私塾(PCCJ※)に学びに行きました。
※PCCJについて、詳しくはこちら

「1ヘクタールの土地で暮らすにはどうしたらいいか」みたいな考え方で自然農法や植生や建築を学ぶんです。

山下
新政酒造の佐藤祐輔さんがおっしゃっていたんですけど、自前で有機農法をやろうとすると、上の畑で農薬を使っていると下の畑にも流れるのでそこから整えなきゃいけないみたいな話になるんですよね。

坂尾さん
そうなんです。結局、「土」の勉強になるんです。

土を作ると、次は森を作るみたいな話になります。コーヒー農園に行くと土壌がケミカルに汚染されててけっこうガチガチなんですよね。

土壌のことも分からないのに産地に行くことに違和感も覚えてきて、パーマカルチャーを通して農業の勉強をした上で現地に行くと、もっとできることもあるんじゃないかと思い始めました。

山下
坂尾さんのそのモチベーションはどこからくるんですか?

坂尾さん
うーん。土を触ってたいというか、これもまたDIY精神ですかね。やっぱり手を動かすことが好きで。

あと土って生態系の源みたいなものですもんね。いろんな菌が重なり合って、死滅していく菌もいれば活発になる菌もいて成り立っていますよね。

それは会社やチームも同じで、仕事できるやつもいるし、バカみたいなやつもいるし、でもいいやつだけ集めてもうまくいかない。

いろんな人がいる中でいい状況を作れるのが大事というのはじつは土と一緒だなと思ってて。

 

きちんと還元するために、良い素材をボリューム大きく買い続ける

山下
スペシャルティをめぐる状況や食の業界って今後どうなっていくんでしょうね。

坂尾さん
うーん。こないだChatGPTに訊いてみたら「広がっていく」と言ってましたよ(笑)。

山下
(笑)。今後ますます「素材」に回帰していく流れは大きくなるような気がするんですよね。

坂尾さん
そこは間違いないと思いますね。アメリカの有機食品の市場規模ってこの20年超で5.3倍に増えてて。日本でも伸びてくると思いますし。

山下
やっぱり規模を大きくしないといけないっていうのはモチベーションになってますよね。そうしないとカカオ生産者からボリュームの買い付けもできないんです。

坂尾さん
そうなんですよね。

山下
今でも十分に買えていないので、農家さんへの還元もまだまだ十分にできなくて。

坂尾さん
やっぱりいい素材をボリューム大きく買い続けるって大事ですよね。

山下
そう思います。オニバスさんとしては今後やりたいことはありますか?

坂尾さん
僕らもやっぱり大きくはしたいなと思いますね。

会社のビジョンが明確にあって「コーヒーがあることで街の暮らしを豊かにする」ためには大きくするのは自然なことなのかなと。

商品のクオリティとサービスとアイデンティティを担保して、いい店舗を1つずつ増やしていきたいですね。

山下
オニバスさんは多店舗展開しててもカッコいいんですよね。

1店舗だけでカッコよくやられている人は当然たくさんいるんですけど多店舗に広げてもそれをやるのって実はなかなか難しいと思います……。

たぶんビジネスとして効率的に広げて売っていくだけだと、画一的なサービス展開になって、人がつまんなくなるんですよね。

結局、クラフトってそこに立っている人のスタイルじゃないですか。ブランド全体が出す雰囲気が大事だと思ってて。オニバスさんにはちゃんとスタイルがあるんですよね。

Minimalも今年10周年を迎え、次の10年について考えているんですけど、ToBe(こうなりたい)ってあんまり浮かばないんです。

でもToDo(これをやりたい)というのはけっこうあるんですね。海外出店とか、買い付けとか。今日は先駆者であるオニバスさんのお話をうかがえて大変勉強になりました。

坂尾さん
こちらこそどうもありがとうございました。

カルチャー対談は以上です。
最後までお読みくださり、どうもありがとうございました。 

坂尾篤史さん

1983年生まれ。家業である大工を経て、オーストラリアでコーヒーの魅力を知り、バリスタ世界チャンピオンの店でトレーニングを積む。2012年、世田谷区・奥沢に「ONIBUS COFFEE」をオープン。コーヒー農園に積極的に訪れてトレーサビリティとサステナビリティを重視したカフェ運営を行なっている。
https://onibuscoffee.com

 

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