【Minimalと暮らす人】Takram・渡邉康太郎さんと考える、 Minimalとコンテクストデザイン。

2022.08.31 #Minimal's Story & Report

Minimalを暮らしの中に上手に取り入れて、自分のスタイルを素敵に楽しむ方々にお話を伺う第3弾。

デザイン・イノベーション・ファーム「Takram」にて、コンテクストデザイナーとしてご活動される渡邉康太郎さんにお話を伺いました。
※これまでの連載はこちら

“Minimal”という、ストイックなブランド名がいいですよね。

──Minimalを知ったのはいつごろですか。

渡邉さん
最初にMinimalを口にしたときがいつだったのか、今でははっきり覚えていません。確か何年か前にイベントの審査で食べたこともありましたが、その前から白金にある工房の前を通りかかって気になっていたブランドではありました。
一般的なハイカカオのチョコレートはよく食べていたのですが、Minimalを食べたときは香りの違いに驚きました。

「Minimal」というストイックなブランド名がまずいいですよね。

分かりやすいのと同時に、自分たちに課すハードルが高い。その「戒め」のような制約が、傍から見ていて好きですね(笑)。

「カカオと砂糖だけ」「単一品種(シングルオリジン)」というのは、ワインやウイスキー(シングルモルト)をイメージすると当たり前のようでもありますが、チョコレートでは意外でした。
「カカオはフルーツ」なので、品質を保持するために冷蔵で温度管理しながら運搬しているというお話も伺って、こだわりに驚きつつ、なるほどと膝を打ちました。

最近は、リモートワーク中はMinimalの板チョコレートを冷蔵庫に入れて、打ち合わせの合間ごとにコーヒーと一緒に一口食べたりしています。

先日、自宅で友人と、数種類のコーヒーの飲み比べをしたことがあったのですが、とても楽しかったのでチョコレートでもぜひやってみたいです。そうなると説明書きもちゃんと読みますし(笑)。



贈り物には、説明のしがいがある商品を。

──贈り物や手土産などで、Minimalをご利用されることはありますか。

渡邉さん
先日は京都の行きつけのお寿司屋さんにお持ちしました。
妻が「このチョコレートは代表の方が中南米に出向いて、ときに危ない目にあったり、現地の人と必死にコミュニケーションをとったりしながら仕入れたカカオ豆からつくられています!」なんて説明していました。

贈り物をするときは、それを選ぶ「理由」があると、贈り手も受け手も楽しいですよね。
たとえば、仕事で関わっている人を会食にお誘いするとき、プロジェクトのテーマに基づいたお店を選ぶことがあります。
もし「ビジネス生態系」がテーマだとすると、多様な生物が刺激を与え合うようなイメージから「カビ」や発酵食を扱うお店にしたり。一緒に食べながら「微生物同士の相互作用をイメージしましょう!」なんて話すのが楽しいですね。

同じように、Minimalを差し上げるときも、「素材や香りを大事にしている人」「ワインやウイスキーでつながっている人」「一つのビジネスで頑張っている人」というふうに、メッセージが届いて共感してもらいやすい人に贈ることが多いです。
説明しがいのある商品が好きなんですね。差し上げるときに興味を持ってもらいたいので。「このブランドの代表の人はカカオを仕入れるために1年の3分の1くらい海外にいるらしいですよ」とか(笑)。

一方で、理由がないときに差し入れするのも好きなんです。
A・A・ミルン『プー横丁にたった家』(『クマのプーさん』の続編)の台詞に「木曜日をお祝いしよう」というのがあるんですが、素敵だなと思っていて。
ふつう贈り物には理由がつきものですが、敢えて何でもない日に手土産を持っていくのも、いいですよね。お菓子やお花を人数分用意する。もはや、理由がない方が楽しい気もしてきます(笑)。

表参道駅が、自分の冷蔵庫!

──Minimalのサービスに期待することはありますか。

渡邉さん
毎朝、コーヒーをドリップして、ヨーグルトにカカオニブとグラノーラをかけているんですが、そこで工房で砕けてしまったようなチョコレートの破片をパッケージにした商品があると嬉しいです。
もし製造段階での作り損じがあるなら、そのまま使ってほしい。いろいろなフレーバーや大きさが混ざっていていいし、ヨーグルトにかけてザクザクと食べれると美味しそうです。

あとは、エイプリルフールに、さまざまな味を足しまくった「Maximum」シリーズとかどうでしょう(笑)。自らに課す戒めを破るようなもの。

Minimalは、ふと誰かにあげたいと思ったときに近所で手に入りにくいのがやや難点です。
Takramのオフィスが表参道にあるので、表参道駅構内のDEAN&DELUCAに常備されていると移動するときに買えてありがたいですかね……。「表参道駅が自分の冷蔵庫!」って言ってみたい(笑)。
※現在表参道店には取り扱いはございませんが、一部店舗の「DEAN&DELU
CA」ではMinimalの板チョコレートを取り扱いいただいています。

「con(共に)text(編む)」デザイン

──コンテクストデザイナーの目線から、 Minimalをどうご覧になっていますか。

渡邉さん
コンテクストとはラテン語の「con(共に)texere(編む)」から来ていて、作り手と使い手が「一緒に作る」ことを目指す運動です。
そのためには、余白や不完全さを残した上で、文脈を敢えて「間違って」届けてもいい。

たとえば、商品開発などで、精密なダイアグラムや図面を見せられると、完成しているだけに手が出しづらく、単に好きか嫌いかの印象で終わってしまうこともあります。それよりも、手書きのラフスケッチを見せた方が「ここ、どうなってるんだっけ?」「もっとこうしよう」と参加してくれる。不完全なもの、間違っているものや矛盾があるものには、みんなが自分なりの考えを持ち寄って、参加してくれるんです。

これが「共に編む」ことができている状態です。
都度、間違っているものやツッコミどころを作れという意味ではなく、未完成や不完全性を許容するプロセスやカルチャーを持つことが大事なんですね。そこから一人ひとりの声を引き出して、全員が作者化してしまうことが鍵です。

チョコレートケースで、ピクニック!

渡邉さん
Minimalで言えば、たとえば、「板チョコレート1枚がぴったり入る革製品のチョコレートケース」を作って、それを首から提げてピクニックに行こう!みたいな企画を打ち出したとします。
「いやいや溶けるよ!」っていうツッコミは当然ありそうですよね(笑)。もちろん保冷剤を仕込んでもいいです。大事なのは実際につくってみること、そしてその後、人に実際に使ってもらうことです。

Minimalはバッグまでは作るけど、そこからの物語は使い手に委ねられています。「こんなチョコレートバッグはどうですか」「このバッグでお出かけしてみてください」と一歩踏み込んでみる。すると、作り手が意図していなかった使い方や、たった一つの物語が生まれてきます。どこに誰と行くのか、どういう場面でチョコレートを取り出すのか。いろいろな人に使ってもらい、物語の厚みが増していくと面白いと思います。

これは、僕が母校の大学で受け持っている「コンテクストデザイン」という授業の内容に近いです。いろいろな人へのインタビューを行い、集めることから新しいものが見えてくる。

使い手・受け手に委ねると言っても、全部を委ねてしまうと、驚きのないものになってしまうことが多いです。
問いの精度が、答えの精度を決める。ラフな問いではラフな答えしか返ってこないです。
この場合は敢えて「板チョコ1枚分のバッグを作る」という作り手の側からの踏み込みが大事です。一見、無駄にも思えることをやってみる。そこまですると、受け手も考えて、自分らしさを持ち寄る形で歩み寄ってくれる。制約の中でその人らしさが出る。敢えて制約を狭く構えることで、逆に個性が際立ちます。五七五という禁欲的な文字数制限の中で、無限の表現が作られる俳句のように。
踏み込んだ企画こそ、エクストリームな面白さが発露するんじゃないかと思います。

補助線を引き、参加してもらうデザイン。

渡邉さん
以前、TakramでISSEY MIYAKEと“コサージュを贈る”プロダクト「FLORIOGRAPHY」を手がけました。
https://www.takram.com/projects/floriography2019

「贈る相手に手紙を書いてください」という、ちょっと重いお願い、踏み込みによって、プロダクトがいつの間にかパーソナルなものに変わっていきます。
手紙を書くことで、自分だけのものに変化するんですね。単にコサージュを買って贈りましょう、というのとは別のものになる。

ただし、いきなり「白紙に書いてください」というのは重たいので、便箋(=コサージュのパッケージ)にはあらかじめいくつかのキーワード(雨、長電話、香水、美術館など)が刻印されています。
これを補助線にしてメッセージを書いてもらいます。贈り手と受け手のあいだに、「長電話」の思い出があれば、そのキーワードに丸をして、手紙を書き始めてくれればいい。普段手紙を書かない人でも書きたくなるような、表現を後押しできるようなものにしたいと思いました。
「表現が怖くなくなる」のが大事です。参加してもらうことでデザインが動き出します。

コンテクストデザインは、一人の物語をきっかけにして、「私もじつはこういうことがあって」という声を引き出すこと、つまり参加を促すことで駆動します。そういう、誰もが参加してしまう場を作りたいですね。

それにしても、首から提げるチョコレートケースって、「要らないけど欲しいもの」だと思いませんか?(笑)

 

渡邉康太郎さん

コンテクストデザイナー。慶應義塾大学SFC特別招聘教授。 東京・ロンドン・NY・上海を拠点にするデザイン・イノベーション・ファームTakramにて、使い手が作り手に、消費者が表現者に変化することを促す「コンテクストデザイン」を掲げる。また同名の授業を出身校のSFCにて教えている。Takramでは、組織のミッション・ビジョン・パーパス策定からコアサービス立案、アートプロジェクトまで幅広いプロジェクトを牽引。関心事は人文学とビジネス、デザインの接続。主な仕事にISSEY MIYAKE の花と手紙のギフト「FLORIOGRAPHY」、一冊だけの本屋「森岡書店」、日本経済新聞社やJ-WAVE のブランディングなど。同局のラジオ番組「TAKRAM RADIO」ナビゲーターも務める。Podcast「超相対性理論」パーソナリティ。近著『コンテクストデザイン』は青山ブックセンターにて総合売上2位(2021年)、4位(2022年)を記録。趣味は茶道、茶名は仙康宗達。
https://www.takram.com

 

イベント予告

下北沢にある本屋「B&B」とTakramのジョイントイベントで、2022年11月に「選書×チョコレート企画」を行います。
Minimalも参画し、書籍の世界観やシーンに合うようなチョコレートを一緒に開発し、販売する予定です。
乞うご期待。
https://bookandbeer.com

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Our Philosophy

引き算の哲学から生まれた、
新しいチョコレートのおいしさ

余分なものを引き算し、
カカオそれぞれの風味を引き立てる。
素材と真摯に向き合うことで生まれた
新しいチョコレートの体験を。

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