「EXPERIMENTAL」シリーズとは、「カカオ豆の製造方法への探求の旅」をテーマとしており、2019年から販売しています。種類や産地によって、フルーツやナッツなど、多彩で豊かな香りや味わいを持つカカオ豆。さらにその味わいは、焙煎温度や時間など様々な要素によって繊細に変化します。その要素の“ある部分”に着目し、伸ばしたり、時には弱めたり、様々な実験をして作られた板チョコレートが「EXPERIMENTAL」です。
Minimalはカカオのプロフェッショナルとして、通常カカオ豆と砂糖のみで板チョコレートをお造りしています。「EXPERIMENTAL」シリーズは「板チョコレートの価値の追求」を目的に通常とは異なる発想と手法でカカオの可能性を広げる、実験・挑戦です。
本記事では「EXPERIMENTAL」シリーズについて、過去に行った実験的な商品についてまとめております。
カカオと向き合ってきた私たちがお届けするカカオ豆の奥深くマニアックな世界をご体験ください。
現在、カカオ豆を“二次発酵”させて酸味を強めた一枚で、カカオ由来のチョコレートの酸味を鮮明に体感できる、第7弾を販売中です。
▼目次
・「EXPERIMENTAL」シリーズとは
・第1弾│余韻の明確化の実験
・第2・3弾│ペアリング手法で生み出した朝と夜のマンディアン
・第4弾│要素の提示と主格の明確化についての実験
・第5弾│要素の提示と多元的な風味表現についての実験
・第6弾│スイートスパイスの提示、テイストとアロマの分離による香りの表現についての実験
・第7弾│酸の増強および酸味、甘味の相対効果についての実験
もっと自由に、もっと美味しく。
新しいチョコレートの可能性を追求する「EXPERIMENTAL」シリーズとは
もっと自由に、もっと美味しく、もっと新しく板チョコレートを楽しむための新たな試みとして、2019年から開発している実験的なチョコレート「EXPERIMENTAL」。
カカオ豆と製法に向き合い続けてきたMinimalが、「板チョコレートの価値の追求」を目的にその可能性をどこまで広げていけるかの実験として、新たな表現に挑戦しご紹介をしていくラインです。
「EXPERIMENTAL」の3つの特徴・試み
①カカオの組み合わせや、カカオと砂糖以外の副材料により、カカオと砂糖だけではいまだ表現が難しいフレーバーを作り出していく
②今あるカカオの持つフレーバーに、類似の系統の味わいを付加したり、強化し引き出すことにより、新たな味わいを創出すること
③スイーツやお菓子のように世の中に存在する完成された味わいを、板チョコレートで同じように表現していくこと
Minimalの製造では「素材を活かす」ことを大切に考え、カカオ豆本来のもつ味わいを、適切に表現するシンプルな製法を採用しています。
通常ラインナップの板チョコレートは、カカオ豆のもつ味わいと香味の評価によってレシピを決定します。例えば、爽やか酸味をもつカカオ豆では、ほど良く渋味を残すことで、なじみ深いフルーツの風味に近づけます。
「EXPERIMENTAL」の試みとして、そこに食感や変化、調和といった要素を加えています。
数量限定でお造りする、カカオ豆と向き合い完成した1枚。ぜひご賞味ください。
第1弾│2019年9月発売
余韻の明確化の実験
副材料を用いて、風味の移ろいと余韻の明確にする
スペシャルティコーヒーやワインのように、口に運んだ瞬間から食べ終わりまでの味わいの変化を楽しむ要素である「余韻」。
カカオそのものの味わいの変化を楽しむチョコレートにおいても「余韻」は重要な要素です。
今回のチョコレートに使用したコロンビア産のアラウカ豆は熟成前はピーチコンポートのような南国系の風味をもつ味わいでしたが現在は熟成を経て、落ち着きのあるしっかりとしたチョコレートの味わいをもっています。
EXPERIMENTALでは、マスカットや巨峰などの副材料を用いて果実味を付加したり、酸味を強化をすることにより、かつてのカカオ豆本来のもつ味わいを体験できうるかどうか、また各パートの食べ比べにより、カカオ本来の果実味や酸味、甘味の変化をはっきりさせることで、口に運んだ瞬間から食べ終わりに至る風味の移ろいと余韻の明確化を感じていただくことが実験の意図です。
今回はチョコレートを3つのパートに分け、①チョコレート+マスカット、②チョコレートのみ、③チョコレート+巨峰、の3タイプで構成しました。
第2・3弾│2020年2・3月発売
ペアリング手法で生み出した朝と夜のマンディアン
ワインテイスティングの手法で作ると、どんなチョコレートができるのか
長年イタリアで料理の世界に身を置きソムリエでもあるエンジニアリングディレクターの朝日は、フレーバーの創作を考える時ワインテイスティングの手法を用いていて、チョコレートにナッツや果実をのせる「マンディアン」に用いる素材に「甘味、苦み、強度、余韻、酸味、渋み」の6項目それぞれに評価をつけながら相性の良い組み合わせを数値と味わいで探っていきます。
2020年のバレンタイン・ホワイトデーシーズンには朝をイメージしたバレンタインデーフレーバーと、夜をイメージしたホワイトデーフレーバーの2種類をご用意しました。
今回のチョコレートに使用したコロンビア産のアラウカ豆は熟成前はピーチコンポートのような南国系の風味をもつ味わいでしたが現在は熟成を経て、落ち着きのあるしっかりとしたチョコレートの味わいをもっています。
キリッとしたい朝に、果実と食べ応えでエネルギーを満たす
朝をイメージしたバレンタインデーフレーバー『EXPERIMENTAL #02』のベースは、果実のような風味を持つカカオ豆を用いたチョコレート。「クランベリー」と「オレンジピール」の果物類、「アーモンド」と「コーヒー豆」のナッツ類を組み合わせました。頭の冴えるような力強い味わいと、エネルギーの高い果実やナッツが一日の始まりに寄り添います。
『EXPERIMENTAL #02』は、チョコレートの酸味を活かす組み合わせを考えました。カカオ豆の渋味をアーモンドの甘味で優しく包みベースをつくっています。酸味、渋味、甘味のキャラクターが異なる果物を加えてチョコレートの酸味を引き出しながらより複雑な味わいに仕上げます。酸味は引き立つのですが、味わいのボディに軸が足りないところにコーヒー豆を加えています。食べる部位で異なる味わいの変化を楽しんでいただければ嬉しいです。
優雅に過ごしたい夜に、やさしい甘みが心も満たす
夜をイメージしたホワイトデーフレーバー『EXPERIMENTAL #03』のベースは、重厚な甘味を持つカカオ豆を用いたチョコレート。「巨峰」と「りんご」の果実類、その他に「生姜」と「カカオニブ」を組み合わせました。こちらは1日の終わりにふさわしい、リッチに包み込むような優しい味わいに仕立てました。
『EXPERIMENTAL #03』は、チョコレートの油分がもつ甘味を活かす組み合わせを考えました。柔らかなで甘味に包容力があるので、他の素材を加えても骨格を失わず香りが多層化します。それぞれの素材の香りを加えながら、カカオニブの苦味や果実の酸味、生姜のスパイス香が味わいを引き締め、長くリッチで心地よい余韻を形成しています。
第4弾│2021年9月発売
要素の提示と主格の明確化についての実験
コロンビア産カカオ豆のもつ複雑な風味の要素からブラウンフルーツのような味わいに着目
ブラウンフルーツのような味わいの印象を最大限強調する(主格の明確化)ために、独自手法でカカオ豆に香りづけをして印象を強化しました。豆本来のドライフルーツのような風味に加え、ジャムやアルコールのような風味をもたせています。Minimalが持つ豆の風味の分析技術(味わいと香りを39種類項目に分類)を駆使して、細かくカカオ豆の風味の特徴を分析し、どんな要素を強めれば豆のポテンシャルを引き出せるかを理解して、香りづけを行っています。
また、ブラウンフルーツ様の性格は、スパイスやフローラルの要素と相性が良いと分析し、カカオニブとオレンジコンフィをトッピングしました。
カカオニブでスパイス香を、オレンジコンフィによってフローラルな甘い香りを、それぞれ補うことで、お菓子としての調子を整えました。
チョコレートのみ部分と、カカオニブやオレンジコンフィがトッピングされた部分で味わいの食べ比べもお楽しみいただけます。
第5弾│2021年11月発売
要素の提示と多元的な風味表現についての実験
フレッシュフルーツの多様な果実感を味わっていただけるように、今回は重ねるという特別な成形手法
シリーズ5回目となる今回は、トロピカルフルーツや柑橘など爽やかな果実感をもつタイ産のカカオ豆(カカオ濃度60%)と、ベリー系の風味をもつマダガスカル産(カカオ濃度80%)カカオ豆を使用し、カカオ豆のもつフレッシュフルーツのような果実味に注目しました。
フレッシュフルーツの多様な果実感を味わっていただけるように、今回は重ねるという特別な成形手法を採用しました。2種のカカオ豆をブレンドしてチョコレートにするのではなく、別々に造ったチョコレートを固めるタイミングで、2層にレイヤードして成型して重ねることで各キャラクターが際立つ1枚が完成しました。
果実と相性の良い要素として、今回はスパイスのジンジャーコンフィを合わせました。ジンジャーコンフィの有無による食感の変化や、余韻の違いをお楽しみください。
第6弾│2022年2月発売
スイートスパイスの提示、テイストとアロマの分離による香りの表現についての実験
カカオニブから感じる2種のスイートスパイスの香り(アロマ)
シナモンやバニラなどスイートスパイスと呼ばれる甘いスパイスの香り(アロマ)に着目しました。
ガーナ産のカカオニブを、スイートスパイスであるシナモン・バニラとともに密閉保管することで、ニブにスパイスの香り(アロマ)をつけ、カカオニブ単体では感じづらいスイートスパイスの香りを強化しました。
このニブの香りを存分に楽しんでいただけるよう、雑味のないガーナ産のカカオバターで造ったホワイトチョコレートでコーティングし、カカオニブの香り(アロマ)が保持されるよう成形しました。またガーナ産カカオバターは、ガーナ産ニブと同様にスパイスの風味が感じられるためよりスイートスパイスの香り(アロマ)を楽しんでもらえるものとなっています。
香りの移り変わりを楽しむ
食べるとはじめにホワイトチョコレートのミルクの香りと甘味を感じます。ニブを噛むとバニラの香りが広がり、最後にシナモンの香りが余韻に残ります。
本製品にはシナモンやバニラなどは加えていません。スパイス自体に味わいはないため、香り(アロマ)を体験していただくチョコレートです。具体的なスイートスパイスの香りの記憶を持っていただければ実験成功です。
第7弾│2022年4月発売
酸の増強よおび酸味、甘味の相対効果についての実験
カカオ豆のもつ酸味を楽しむ1枚
フルーツであるカカオは、カカオの実からカカオ豆を取り出し発酵・乾燥させてからローストし、チョコレートに仕上げていきます。
この発酵の過程は通常原産国でおこないますが、今回Minimalでは日本にカカオ豆が到着してからさらにエイジング(熟成)することで二次発酵をおこない、カカオ豆のもつ酸をさらに強化しました。
今回使用しているベトナム産カカオ豆は、通常では濃色の花弁のような渋味を感じます。それを二次発酵することで、酸味を増強させ、ベリーのようなより瑞々しい味わいを引き出しました。
トッピングのライスパフで甘味と酸味の相対効果を実感する
今回酸味を強化しているため、適切な酸味の強度も味わっていただけるよう、ライスパフをトッピングしました。ライスパフを酸味の強化されたチョコレートと一緒に咀嚼することにより、甘味と酸味が混じり合い、バランスの良い酸味と甘味をお楽しみいただけます。
さらに最下部にはオレンジピール・ジンジャーコンフィをトッピングしています。
チョコレートはベリーのような酸味を感じていただけますが、トッピングのオレンジピールと合わせることで、果実それぞれの味わいの違いを実感していただけます。またジンジャーコンフィと合わせることで、チョコレートのもつベリー系の味わいと相性の良いスパイス感を感じていただけます。
普段何気なく口の中で“美味しい”と感じているものが、酸味や甘味、酸味やスパイス感との調和など、複数の要素の組み合わせによって成り立っていることを実感できる1枚となっています。