「北総の小江戸」と呼ばれる、懐かしさが漂う町並みの千葉県香取市佐原。
その佐原から南へ車で20分ほど走ると、広大な畑が広がる風景の中に、石田農園があります。
天保1820年から200年以上続く石田農園は、土地の特性と代々受け継がれた知恵を生かしながら、現在はさつまいもづくりに真摯に向き合われています。
Minimalでは秋シーズンに、ここ石田農園で大切に育てられた「金蜜芋」を使用したチョコレートスイーツを販売しています。
秋本番を前にした8月、Minimalのスタッフはさつまいもへの理解を深めるため石田農園を訪れました。
中央：石田農園石田さん
しっかり洗浄し、人の目で選別
到着すると、笑顔の石田さんが出迎えてくれました。
早速まず見せてもらったのは収穫後のお芋の選別・洗浄場所。
少し黒ずんだ断面の芋を手に取り、「これは失敗なんです」と石田さん。
生の芋は切った直後は白っぽい色をしているが、30分ほどで断面が黒くなるようなら傷んでいる証拠。冬の芋なら爪で軽く傷をつけて、黒くなるスピードで判断することもあるといいます。
「黒いからといって必ず食べられないわけではない。でもだめなものは食べれば一口で分かるんですよ」と、笑顔ながらも経験に裏打ちされた言葉が印象的でした。
収穫した芋は井戸水で高圧洗浄。土がしっかり落ち、匂いも消えます。その環境は生産者によって異なり、洗浄水の質によっては納品先で再度の洗い直しが必要になることも。
石田さんは、納品後の扱いやすさまで考えた丁寧な洗浄を実践されていました。
実際に井戸水をいただいてみると、口当たりはなめらかで雑味がなく、その清らかさを実感します。
機械にはできない、手で植えるひと押しの力
さつまいものベースとなる、お芋の苗は2月から4月にかけてハウスで育成。温度と水の管理が命です。
土づくりも重要で、前年の収穫を見ながら肥料配合を決定。連作にならないよう、土を休めるために人参を植えて土壌改善を図ることもあるそうです。
やがて畑の準備が整うと、広大な畑に苗を一本一本、手で植えていきます。
まず苗を土にそっと押し込み、最後にギュッと土を締める。
そうすることで根がしっかりと張りやすくなるのだそうです。土がふわふわのままだと、根が落ち着かず、成長の初めに影響が出てしまうのだとか。
機械で植えると、どうしても土を十分に押さえることができず、ふんわりした状態になってしまうそうです。
さらに、人の指先のような繊細な加減は機械には再現できず、植え穴が同じような「船底型」になってしまい、根が浮いたまま植わってしまうのだとか。
深く入りすぎれば硬い層に当たり、結果として小さなイモや細い根のようなものしか育たなくなってしまう。
だからこそ、人の手で斜めに苗を植えてあげることが、健やかなお芋を育てるために欠かせない大切な工程なのです。
実は繊細なさつまいもの、温度管理の難しさ
実はさつまいもは繊細な食べ物。少し固いものにあたっただけで皮が簡単に削れてしまうため、1本1本丁寧に扱う必要があります。
さらに収穫後の温度管理も重要。適切な温度・湿度に保たないと、一晩で腐敗してしまったり、芽が出てしまうこともあるのだそうです。
「ジャガイモと違ってさつまいもの芽に毒はありません。取ってしまえば食べられるんです」と話す姿からは、愛情がにじみ出ていました。
石田農園の貯蔵庫は、さつまいものコンテナ1万ケースを保管可能。温度は15〜20度、湿度は散水によって調整されています。フタの閉じ忘れや乾燥は傷みの原因となるため、細心の注意が払われています。
「管理次第で寿命は大きく変わるんです、上手くいくと1年は持ちます」と語ります。
貯蔵庫の湿度を保つのに重要な散水
熟成の知恵がつくる「金蜜芋」の美味しさ
石田農園の敷地には、貯蔵庫のほかに特別な空間「地下貯蔵庫」があります。
ここは気温が一定ではなく、夜には下がり、日中には上がるという自然の振れ幅をもつ場所。さらに湿度も程よく、50〜60％程度を保っています。
限られた期間に利用される短期熟成の専門貯蔵庫です。
雨が降っても水が直接入ることはなく、土が時間をかけてしっとりと湿り気を蓄えてくれるため、芋にとって理想的な環境が整うのです。この状態を15年以上維持しているといいます。実際に手で触れてみると、確かにしっとりとした土の質感が伝わってきました。
石田さんがかつて祖父に「どうしたら芋が甘くなるのか」と尋ねたことがあり、その答えを大規模に形にしたのが、今の熟成の仕組みだといいます。
加工場で生まれ変わる「規格外」のさつまいも
石田農園では、さつまいもを収穫することがゴールではありません。農園には加工場も併設されており、収穫後の品質や味わいにも徹底的にこだわっています。
きっかけは、「保管方法によって、さつまいもの味わいはもっと変わるはず」というひとつの仮説。実際にその可能性を確かめるため、卸先で使われる焼き芋機を導入し、味わいの変化を追求しています。
さらに、形が悪いものや規格外の芋も、焼き芋にすれば立派な商品に。
農園ではかつて、規格外の芋は販売できず廃棄されることもありましたが、大小さまざまな芋を詰め合わせた「不揃い袋」が定番商品に。食べものを無駄にしない工夫が新しい価値を生み出しました。
16段ある遠赤外線の焼き芋機にに芋を仕込み、温度設定をしたうえで100分ほど焼き上げます。時間によって細かく途中でひっくり返しながらじっくりと火を通すことで、甘みが引き出されます。
焼いた後はパック詰め、シーラーで密封、金属探知機で異物検査と工程は徹底されています。蜜が多く柔らかい芋は干し芋に加工されるなど、それぞれの特性に合った活かし方がされています。
金蜜芋を味わうカフェ体験
さらに石田農園の取り組みは、加工だけにとどまりません。
最後に訪れたのが、石田農園が運営するさつまいも専門カフェ「金蜜堂」です。
規格外のさつまいもを活用しながら、こだわりの詰まったパフェなどのスイーツを提供されています。金蜜芋の価値をさらに高めるための挑戦として、観光客にも地元の方にも愛される店舗作りを目指し、さつまいもの美味しさを最大限に活かしたスイーツを提供されている場所です。
スイーツだけでなく、ニョッキなど食事メニューも
石田農園には「育てる」だけでなく、「活かしきる」ための工夫と哲学がありました。
苗の一本、焼き上がった不揃いの芋に至るまで、そのすべてに知恵と情熱が息づいています。
Minimalでは、この丁寧に作られた金蜜芋を使った2つの商品を販売しています。
ぜひ、その深い味わいと農園の想いを感じながら、特別なひとときをお楽しみください。
今回Minimalからは、今季の金蜜芋の商品開発を担当した片岡と、シェフ奥野が訪問させていただきました。
片岡
「農園やカフェでの体験を通じて、さつま芋の味わいを農園としてどのようにお客様へ届けるか」その姿勢から多くを学ばせていただきました。
Minimalもまた、個性豊かなカカオの魅力をどうお客様に伝えるかを日々模索しており、重なる部分も多いと感じています。
金蜜芋の真髄ともいえる甘さと香りがチョコレートと合わさることで生まれた、より深みのある味わいを、今季の2つの商品を通して多くの方に楽しんでいただけたら嬉しいです。」
奥野
「実際に畑や加工場を見せてもらいながら、石田さんから「どんな想いで育てているのか」「どんな工夫をしているのか」を直接聞けた時間は、本当に学びが多くて貴重でした。
特に印象に残ったのは、不揃いの芋も無駄にせず活かしきる工夫です。
「育てた食材を最後まで大切に使いきる」という姿勢は、私たちの仕事とも重なるところがあって、改めて食材と真摯に向き合う大切さを実感しました。
金蜜芋づくりへのこだわりや想いを、私たちの手を通してお客様に届け、食材の背景まで感じてもらえたらと思っています。」
ガトーショコラ ソフト -金蜜芋-
「金蜜芋」を生地からトッピングまでふんだんに取り入れ、さらにカカオ由来のナッツのようなコクのある風味の「NUTTY」チョコレートを合わせることで、深みのある秋らしい味わいに仕上げた、期間限定のガトーショコラです。
【価格】¥3,990(税込)
【発売日】2025年9月1日
【販売期間】2025年10月末頃までを予定
※無くなり次第終了
【取扱店】Minimal The Baking 代々木上原・Minimal The Specialty 麻布台ヒルズ
金蜜芋のチョコレートドリンク
金蜜芋の濃厚な甘みを溶け込ませたチョコレートドリンクに、ホイップクリーム、キャラメルのような甘味のブロンドチョコレートと金蜜芋の特製ソース、さらに角切りの焼き芋を重ね、素材の存在感を余すことなく引き立てました。
濃厚で満足感がありながらも、ビターな高カカオチョコレートをベースにすることで後味は軽やかな印象に仕立てました。甘さの余韻を感じつつも重すぎず、心地よいキレのある仕上がりとなっています。
▼「金蜜芋のチョコレートドリンク」（ホット／アイス）販売情報
【価格】¥890（税込）
※イートイン／テイクアウト可
※麻布台ヒルズ店のみテイクアウト：¥900（税込）、イートイン：¥1,000（税込）
【発売日】2025年9月1日
※祖師ヶ谷大蔵店のみ、2025年9月3日発売
※ホットは2025年10月1日よりご提供予定
【販売期間】2025年11月末頃までを予定
【取扱店】Minimal 富ヶ谷本店・Minimal The Baking 代々木上原・
Patisserie Minimal 祖師ヶ谷大蔵・Minimal The Specialty 麻布台ヒルズ
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