Minimalが10年目にして満を持して発表したボンボンショコラ「ザ・シングルオリジン」。
板チョコレートで培った技術を結集し、“世界で一番違いがわかるボンボンショコラ”を目指して開発しました。
2025年2月、Minimal代表でカカオバイヤーでもある山下が、「全8種の食べ比べ」解説を行うテイスティング・ワークショップを全6回開催しました。当日のイベントの様子をレポートします。
カカオを“刺身”で出したい
ワークショップは本社工房オフィスにて開催されました。各テーブルには、ボンボンショコラ8粒(1箱分)と常温のミネラルウォーターと、寒いので温かい白湯をご用意しました。
山下
こんにちは。Minimal代表で創業者の山下と申します。このイベントは年に1回、普段はなかなかお話しない裏話や産地の秘話などもたくさんお伝えする、このシーズンだけの限定ワークショップです。
その分、情報量が多いと思うのですが、ぜひリラックスして聞いていただければと思います。
山下
Minimalでは、素材を活かす“日本の感性を活かしたチョコレート”を造っています。
僕は「カカオを刺身で出したい」と思っています。
刺身って素材をそのまま出した究極系ですよね。魚を切って、醤油や塩や、あるいはもう何もつけずに食べる。
カカオも、素材の香りにこだわって楽しみたいと考えています。
今回のボンボンショコラはクリームなども入っていますが、原材料のチョコレート自体はカカオと砂糖だけで造っています。
山下
今回のボンボンショコラの味の違いは、カカオ豆の味の違いになります。
味わいの違いをより明確にするために、チョコレートのパーセンテージや甘さ、カカオ豆の焼き方などを調整しつつ、ボンボンショコラに仕立てています。
8種のテイスティング解説
それでは、一つずつ一緒に食べていきましょう。
Ghana | ガーナ
ガーナは「王道のチョコレート」の苦味と甘味を楽しめます。
ガツンとくるボディが強いですが、余韻に少し甘さに変化する感じ、コクっぽい甘さに変わる感じが分かりますでしょうか。これがガーナのカカオ豆が持つココナッツのような甘さです。
One More Point 「伝統的な発酵」
ガーナでは、バナナの葉にくるむ「ヒープ法」という伝統的な発酵で造られています。
きちんと管理された「ボックス法」に比べて弱い発酵になるのですが、そのおかげで甘いスパイス感がつきます。
効率を求めてよりよく管理できるように文明技術が入っていった結果、失われた味があるということですね。僕はガーナのヒープ法は残していきたいと考えています。
Madagascar | マダガスカル
先ほどのガーナと比べると、酸味を感じませんか。
かすかにキュッと締まるような酸味と、ちょっと渋味由来の花みたいな香りがあります。ノートには赤いベリーと書きましたが、ちょっとフレッシュな酸味ですね。
One More Point 「ペアリング(ダージリン)」
マダガスカルにはペアリングドリンクをご用意しました。
紅茶専門店 Uf-fu(ウーフ)さんで取り扱っているダージリン(シーヨック茶園)です。ボンボンショコラを口に入れ、口の中で溶けてきたら紅茶を合わせてみてください。マダガスカルの酸味の輪郭がよく見えるようになります。
紅茶の渋味と、カカオの持つフローラルな感じを合わせて、紅茶を飲んだあとにふわっと心地よい渋味が広がって持ち上がるのを体感いただけたらと思います。
Colombia('Arhuaco) | コロンビア(アルアコ)
これはアルアコ族という先住民族が作る希少なカカオです。
非常にフレッシュで、「ブドウのジャムのような味」と書きましたが少しフルーツヨーグルトみたいな酸味と、最後の方に鼻にすーっと上がってくる甘い香りが、クチナシの花というと言いすぎですが、白い花系の甘い香りがあります。
華やかな香りと果実感が両立されたMinimalの板チョコレートの人気銘柄です。
One More Point 「レシピによる風味の強化」
今回味にほとんど影響がない範囲で、ウォッカを入れています。
コロンビアの豆など鮮やかな果実感をもっている豆に対して少量加えることで、果実感がよりフレッシュに感じられます。少しレシピを工夫することで、豆が本来もっている魅力をさらに際立たせることができます。
Peru | ペルー
ブルーベリーなどのベリー系の香りもありながら、ちょっと複雑でリンゴみたいなニュアンスもあります。
ペルーはカカオ産地としてとても注目されている産地で、国と一括りにせず、地域ごとにカカオ豆の特徴がでている素晴らしい産地に船長しています。今回は、フニンという地域の豆を使っています。
One More Point 「ペアリング(ブドウジュース)」
こちらもペアリングドリンクをご用意しました。ワイン用のブドウ品種のメルローを100%絞ったジュースです。強烈な酸味があります。
普段食べる甘いブドウからは想像がつかないですよね。これがワインになるので、ワインがあれだけの酸と渋味がすごく強い飲み物であるのは、こういうのを食べるとよく分かりますね。
ボンボンショコラを食べて咀嚼して消えていったくらいに余韻で合わせてもらうと、渋味と酸味のところがぐっと持ち上がっていきます。どちらかというと、この液体の方が広がる感じですね。
Tanzania | タンザニア
これまでのものとは違う酸味が感じられるかなと思います。ちょっと若くて青々しいリンゴの感じがしませんか。先ほどのペルーにもリンゴの酸の要素があるんですけど、余韻が違いませんか?
今までのものは渋味が鼻に上がってきていたのですが、タンザニアはチョコレートのまろやかな苦味に変わっていきます。渋味が少ないので果実味が引き立って、後からチョコレートに変わるフレーバーですね。
One More Point 「10年来の信頼関係」
昔、アメリカのBean to Barの祭典にゲストで呼ばれたときに出会いました。
優秀な方で、自国のカカオを広めたいとタンザニアでカカオ農園の会社を立ち上げました。もう10年くらいの付き合いで、ものすごく誠実な方でロジックにも強く、とても信頼している生産者の一人ですね。
Mexico | メキシコ
これはちょっと面白い風味で、咀嚼するごとに味が変わっていくフレーバーです。
最初は洋梨のようなフレーバーがありますが、噛んでいくとナッツのような甘味、白い花系の香り、最後には胡椒のような刺激的なスパイス感に移り変わっていきます。こういう複雑なキャラクターは、僕は嗜好品の極みだと思っています。
One More Point 「ホワイトカカオ」
「ホワイトカカオ」という希少品種を100%使っています。
その名の通り色が白いカカオなのですが、ポリフェノールの色素が少ないんですね。ポリフェノールは先ほどから「渋味」と呼んでいるものの正体です。渋味を発することでカカオが外敵から身を守る、種の保存の仕組みなんですね。
この色素が薄いということは、生物種として弱いということなので、希少な品種になっています。渋味が少ないので、発酵を上手にやらないとすぐに酸味や雑味がつきます。造り手の技術がかなり必要な品種といえます。
Brazil | ブラジル
これは人によっては食べてびっくりしそうですけど、シャルトリューズ(薬草酒)のような、強い渋味があります。
ブラジルのカカオは、すごく野生味が強いんです。ブラジルのアマゾン川の流域は生態系が豊かで、生存競争が激しく、その影響でポリフェノールを強く出す傾向があるんじゃないかと個人的には思っています。
One More Point 「野生味を活かす焙煎」
渋味の強いブラジルのカカオを美味しく食べるには、高度な製造技術が必要です。
Minimalでも長年の研究を重ね、カカオを焙煎する際に渋味を抑えて香りに変換する温度帯を見つけました。今回のボンボンショコラではあえて渋味を強く残していますが、この強烈な個性を楽しんでいただけたらと思います。
Malaysia(Cacao Butter) | マレーシア
最後は皆さんにホッとしていただける味ということで、ブロンドチョコレートをご用意しました。
ブロンドというのは、カカオバターにミルクを入れた「ホワイトチョコレート」を焙煎したものです。キャラメルのように煮詰めるので、本当にキャラメルそのもののような味がします。
ペアリングには、あたたかい麦茶を合わせました。もう何も言わずに幸せな気持ちになるいう形なんで、最後それで締めたいなと思っておりますので、お好きに飲んで食べてみてください。
One More Point 「丁寧に搾られたカカオバター」
ホワイトチョコレートが重たい印象で苦手という方も多いと思うのですけど、ミルクや甘味が多いことに起因していることが多いです。
Minimalでは丁寧に搾ることで香りとコクを残したカカオバターを使用することで、ミルクを加える量を少なくしています。そのため、すっきりと食べやすくなっています。
最後には、マレーシアのボンボンショコラと相性の良いドリンクとして、EN TEAの「麦茶」をお楽しみいただきました。
ブロンドチョコレートの甘さやコクに、麦茶のあっさりとした香ばしさが合わさることで、チョコレートの味わいがより広がります。
ペアリングをお楽しみいただきながら、お茶で最後のほっとしたひとときを過ごしていただきました。
お客様の声
ご参加いただいたお客様の声をご紹介します。
「Minimal初のボンボンショコラ、非常に楽しみにしていました。想像以上に違いが明確で美味しくて、解説もマニアックで納得感もあってとても楽しい時間でした。」
「普段聞けないマニアックなお話しが楽しかったです。チョコレートがより美味しく感じました。マリアージュも感動しました。ボンボンショコラめちゃくちゃ美味しいです」
「どれも風味が違っていて、ボンボンでも世界を旅できたのが楽しかったです。
ブラジルは複雑な香味で、中国茶(龍井)と合わせたいと思います。
素材やドリンクとのペアリングもできてさらに大満足です。麦茶とマレーシアのペアリングが特に刺さりました!早速、EN TEAさんの麦茶も買って、自宅でも購入したミニマルさんのボンボンと合わせたいと思います。」
「カカオが違うだけでこんなにおいしいチョコレートが沢山あるのが衝撃でとても勉強になりました。
ボンボンショコラをあんまり楽しめたことがなかったのですが、今回のテイスティングイベントのお話を聞いてボンボンショコラを楽しめそうだと思いました!ありがとうございました!」
「カカオの産地やカカオ豆の発酵方法、ボンボンショコラにするための焙煎やひき方など、さまざまなこだわりを詳しくうかがうことができて、食べるときの楽しみが増しました。飲み物とのペアリングもよかったです。」
「この価格でボンボンショコラいただけて、解説も聞いてて楽しかったです。漠然とボンボンショコラ食べたらもったいないと思いました。」
「チョコレート愛と製造の工夫に溢れた商品をいただくことができ、味わい深く感じました。」
今年が創業10周年イヤーとなるMinimalは、引き続きさまざまな企画やイベントを実施予定です。
ぜひ今後もご一緒にお楽しみいただけたら嬉しいです。
※ボンボンショコラはオンラインストア、全店舗にて販売中です