2025年12月1日。Minimalが創業10周年を迎えました。
この大きな節目をお客様と一緒にお祝いしたいと思い、記念パーティーを開催しました。
開催レポート第二弾は豪華トークセッションの様子をお届けします。
※レポート第一弾はこちら
パーティーは入れ替え制で、第1部と第2部でそれぞれ特別ゲストをお招きし、Minimal代表・山下とトークショーを執り行いました。
その模様を一部お届けします。
第1部:小説家・吉本ばなな氏と、「RiCE」編集長・稲田浩氏のトークショー
日頃からMinimalをご愛好いただいている小説家の吉本ばななさんと、フードカルチャー誌「RiCE」の編集長である稲田浩さんにご登壇いただき、Minimal代表・山下と3人でお話しいただきました。
3人それぞれの出会いから、注目の食のおはなし、さらにMinimalの印象など話題は多岐にわたりました。
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山下
食への造詣が深いお二人が今、気になっている食のカルチャーや、長く愛されるお店の秘訣についてお話をいただけますか?
稲田さん
私は「ペアリング」ですね。お酒と料理をバチっと合わせるのはなかなか難しいんですよね。こちらの体調や気分もあるので「正解」ってないじゃないですか。でも、その中で本当にバチっときたら感動がすごいんですよ。ただ今は、お酒を飲まない方も増えてますね。
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吉本さん
そうですね。ノンアルコールのペアリングも増えてますよね。
稲田さん
そうなんです。じつはノンアルのほうが自由度がすごく高いんです。提供側のクリエイティブの余地があり、お客さんも初めての体験というのか「こんな合わせ方があるんだ!」という驚きを得やすいと思います。
山下
「RiCE」のペアリング特集でも、後半ページはノンアルになってましたね。
吉本さん
そう。すごく珍しくて面白かった!
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稲田さん
ノンアルだけで一冊分を展開するにはまだ時代が早いかなと思って、後半になりましたけどね。今、たとえば「ノンアルのウイスキー」とか出てるんですよね。ちょっと意味わからないでしょ?(笑)
山下
そうなんですね!
吉本さん
ウイスキーにしてからアルコールを抜くんですかね。
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食のお店は、店主の「頭の中に入れる」のが面白い
山下
ばななさんはいかがですか?
吉本さん
私は食のお店って、店主の「頭の中に入れる」のが面白いと思ってるんです。店主が極めていけばいくほど、こちらもお店に行く喜びが増えるというか。で、その中には「不機嫌」っていうのはないと思うんです。「厳しさ」はあると思うんですけど。
本当に好きなことをやっていて、自分の頭の中にきて人が楽しんでくれるということだから。それって小説も同じなんですけどね。だから、お店っていうのは「機嫌のいい場所」であってほしいなと思っているんです。
私はMinimalさんの8周年グッズも9周年グッズも大量に持っているくらいのファンですが、お店に行くと店員さんがすごく楽しそうに「今これが入荷しました!」とか「このドリンクいいですよ」と話をしてくれるんです。
本物のこだわりを感じてすごく幸せな気持ちになります。
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山下
ありがとうございます。今日はうちの販売スタッフも来ているので、とても嬉しいです。
吉本さん
よくある美味しいチョコレート屋さんって、めっちゃホームページが重かったり、買いに行ったらめちゃくちゃ並んでたり、手に入りにくいように数を限定してたりもするけど、Minimalさんはそういうんじゃなくてネットでも買いやすいし、お店も行きやすいですよね。
そういうのも「機嫌がいい」ってことにつながると思います。
山下
どうもありがとうございます!
第2部:新政酒造・佐藤祐輔氏とのトークショー
第2部では、“日本酒業界の革命児”と名高い新政酒造の佐藤氏をお招きし、旧知の仲であるMinimal代表・山下とお話をさせていただきました。
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山下
新政酒造では、「生酛(きもと)」という古来の製法で、仕込みに使う「木桶」も自社製造するなど、他の酒蔵ではまずやらないようなことまでなさっていると思うのですが、そこまでするのはなぜなのですか?
佐藤さん
僕は元来飽きっぽい性格なのですが、木桶仕込みで生酛をやると毎日何かのトラブルが起きるんですね。毎回対応しなきゃいけないんですが、それが性に合ってるというか飽きないんですね(笑)。機械でコントロールすれば一定品質のものはできると思いますけど、そうなると自分は飽きてくるだろうと思います。酒造りへの興味も湧かなくなるんじゃないかな。
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山下
そういうことですね。祐輔さんは普通に息をするようにこれをさらっとおっしゃいますけど、とてつもないことですからね(笑)。農作物と向き合って無数の変数を見ながら自分たちのものづくりを志向することは、僕たちもそういうふうになりたいなとつねづね思っていますが、Minimalはまだまだ新政酒造さんの域にはとても達してないなと……。
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佐藤さん
そんなことないと思いますよ。日本でカカオ豆の栽培からやってみようなんて、なかなかいないですよね。
山下
コロナ禍で現地に渡航できない期間が続いたので、自分で作ってみようかなと思ったんです(笑)。
造り手が自分のプロダクトに対してものすごい情熱を持っている
山下
Minimalの印象やこれから期待することなどありますか。
佐藤さん
飲食のベンチャー経営者で、ものづくりの現場にエンジニア的に携わる人ってちょっと珍しいんじゃないかと思うんですよね。日本酒の酒蔵には割といるんですけど、家業であってベンチャー企業ではないですしね。
造り手が自分のプロダクトに対してものすごい情熱を持っていることが、安心感につながるんです。
Minimalほどエンジニアの視点から真摯な姿勢で、手を抜かずにものづくりしている会社はないと思っています。そこがあるから、僕らが仲良くいられる一つのポイントじゃないかなと(笑)。
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山下
これからも嫌われないようにますます頑張らないといけませんね(笑)。本日はどうもありがとうございました。
会場の一角で、テイスティングのワークショップ
パーティーでは、Minimal工房の職人やスタッフがお客様と直接お会いできる機会ということもあり、事前お申込制の板チョコレートのテイスティングワークショップを開催しました。
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チョコレートを1枚ずつ食べ比べていただきながら、風味評価(テイスティング)の解説を実施できたことは10周年パーティーならではの企画になりました。
さらに、最後にはレア景品もあたる抽選会もおこない、当選者が発表される度会場は拍手喝采で盛り上がりました。
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Minimal代表・山下の閉会のご挨拶
会の最後には、代表・山下より改めて感謝のご挨拶をさせていただきました。
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「Minimalを創業して10年の中で、食に携わることの重さと幸せを感じたエピソードを、一つお話しさせてください。
お店をオープンして、2年目の夏でした。お客様からお手紙をいただきました。「来年2月のバレンタインデーにMinimalのチョコレートを送ってほしい人がいるので、先にお金をお支払いします」という内容でした。
お手紙の主は女性の方で、送り先は旦那様でした。
ご自身は、もしかしたら2月にはこの世にはいないかもしれない、とのことでした。
ご夫婦で外食されるのが趣味だったそうですが、ご主人は甘いものがあまり得意ではなかったそうです。
でもMinimalだけはものすごく美味しそうに召し上がっていたとのことで、お二人の思い出のお店であり、ご主人もきっと喜んでくれるだろうとのことでした。
僕は飲食業の経験が当時は浅かったのですが、これはとんでもない仕事なのだと感じました。
食の仕事は、人生を彩る大事な記憶になり得るのだと。
僕はカカオという素材への好奇心から「もっと楽しくて美味しいチョコレートを造りたい」と思って起業したのですけど、こんなにも誰かの人生に寄り添っていけるものになるのだと学びました。
Minimalでは職人たちによる「ものづくり憲章」というのを掲げており、「こころに遺るチョコレートを造る」という言葉があります。
もし「人生の最後に食べたいもの」としてMinimalのチョコレートを挙げてくださることがあるならば、僕たちがこの仕事を選び、毎日一生懸命やってきたことの意味があるかもしれないと思いました。
僕は次の10年でもっと美味しいチョコレートや、もっと新しいチョコレートを食べてみたいと思っています。そのために、僕自身はカカオを買い付けるバイヤーとして、どんどん南国のジャングルの中に入っていきます(笑)。
皆様のおかげで今日を迎えられ、この場に立つことができました。これからも皆様と一緒にチョコレートの世界を冒険していけたら幸せだなと思っています。引き続きMinimalをよろしくお願いいたします。本日は本当にどうもありがとうございました。」
Minimal代表・山下貴嗣
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次回のイベントレポートでは、ご参加いただいたお客様のインタビューをお届けします!