Minimalが年に一度テーマを設定しておつくりする“職人達の作品集(Works)”
今年のテーマは「Blend」です。
「カカオ豆と砂糖のみ」で、カカオ・チョコレートをブレンドすることで、9種フレーバーの板チョコレートに仕上げました。
今シーズンのお披露目として、2024年1月27日と2月3日に、Minimal代表・山下が9種チョコレートの食べ比べ解説を行うテイスティング・ワークショップを開催。
今回は、よく晴れた冬の土曜日、1月27日のイベントの様子をレポートします。
チョコレートの歴史から、産地の現状まで
お客様と会話しながら、じっくり新作チョコレートに親しんでいただくため、催行人数を抑えた席数で実施しました。
会場は、渋谷の応援購入サービスMakuakeさんのオフィスをお借りしました。
ご参加者の各テーブルには9種のチョコレートとミネラルウォーターが置かれた状態で、イベントが始まります。
しかし、すぐに実食とはなりません。Minimal代表・山下が登壇してご挨拶からスタートです。
チョコレートのテイスティングをより深く楽しんでいただけるよう、Minimalの想いや製造方法、カカオとチョコレートの歴史など少しお話させていただきます。
Minimal代表・山下
本日は貴重な週末に足をお運びいただき、どうもありがとうございます。じつは今日はけっこうたくさんチョコレートを食べていただく予定です(笑)。
目の前に9種類用意しておりますが、それ以外にも特別なものをご用意しています。お替わりは自由ですので、ご自身で食べたい量をぜひ調整なさってください。
Minimalは2014年に創業しまして、今年で10年目を迎えます。僕たちの10年間の取り組みをお話しすることで、どういう解像度でチョコレートを捉え、どういう産業構造の中でチョコレートを作り替えようとしているかをなるべくお伝えしたいと思っています。
冒頭から暑苦しいお話ですみません(笑)。
イベントではスクリーンにプレゼンテーションシートを投影しながら、チョコレートの歴史についてなどもお話ししました。
Minimalは、「大航海時代にヨーロッパにもたらされたカカオ豆」と「近代の産業革命で開発されたチョコレート」という西洋由来の産業構造に対し、日本人の感性で一石を投じたいという思いで挑んでいます。
Bean to Barという「カカオ豆からチョコレート」を一貫製造することで、カカオ豆という素材を日本人のきめ細やかな感性で捉えることができ、既存の機械化された製造工程を見直して職人の手仕事のものづくりを行うことで、“チョコレートを新しくする”ことができると考えています。
本当の意味でMinimalが世界にインパクトを与えられるのは、もしかすると100年後なのかもしれません。
世界で広く受け入れられたとき、「文化になる」と僕たちはよく言っているのですが、今はまだ「カウンターカルチャー」の段階と言えます。
Minimalでは、市場価格の3倍近い金額でカカオ豆を買い付けています。
フェアトレード以上の価格で取引していますが、僕は「いい品質の豆」なら当然そのくらい支払いたいと思っています。
それを美味しいチョコレートに仕上げて皆様に楽しんでいただき、経済を回すことで生産者に還元するということを9年心がけてきました。
ちなみにカカオ生産地は60カ国以上と言われています。僕は数えてみたらそのうち35カ国に行きましたが、まだあと半分くらいありますので、これからどんどん行きたいです!
Minimal10年目の到達点
「Minimal Works2023」は、Minimal10年目の到達点と捉えています。これまで培ってきた技術と経験を総動員した「作品集」で、カカオとチョコレートの奥深い世界を体感していただける板チョコレート9枚に仕上がりました。
NUTTY(ナッティー)・FRUITY(フルーティー)・SAVORY(セイバリー)という大分類でカテゴライズし、各3枚ずつという構成になっています。
イベントでは、1枚ごとの着想から製造過程、ブレンド内訳、フレーバー官能評価などを解説し、実食していただきました。
また、ブレンドする前の材料と言える「シングルオリジン・チョコレート」を特別にご用意し、食べ比べていただくことで、ブレンドでいかに味わいが変化するかを体感していただきました。
僕は個人的に今回の作品集をお披露目できることが感慨深いです。カカオ豆という素材をどう扱うかを9年間一つずつ研究してきた成果をすべて詰め込んでいます。
たとえば"熟成"という技術は、コロナ禍で港が閉鎖され、コンテナの中でカカオ豆の状態が変わってしまったことから、手探りで開発したものでした。
また"ブレンド"という技術は、職人のセンスが求められるもので、フレーバーのテイスティング評価をした上でどうやって職人が身につけるのかを試行錯誤しているところでもあります。
全9種の板チョコレートを食べ比べ
Minimalでは社内でフレーバーのテイスティング官能評価を39分類で数値化しています。
その評価値に従って全9種の板チョコレートを解説し、実食していただきました。
NUTTY
ナッツのような風味のNUTTYラインにとって重要なフレーバーは、SWEETNESS(甘味)とBITTERNESS(苦味)です。そのバランスを土台にして、他にどんな特徴的な要素が付加されているかを感じ取ってみてください。
01は甘いミルクの香りが高いのが特徴です。これはカカオバターをブレンドした影響です。
02は皮付きナッツの香りが高く出ています。SWEETNESSが01よりも下がった分、NUT-SKINが強く感じられます。
03はフィリピン産カカオを深煎りにして香ばしい焙煎の苦味を強めています。そのためBITTERNESSの点数が01・02より高く出ています。
この3枚は砂糖の割合を同一にしているため、カカオの配合による風味の違いを感じてもらいやすいと思います。
FRUITY
フルーツのような香りを楽しむFRUITYのベースは、SWEETNESS(甘味)とACIDITY(酸味)です。今回の3枚はタンザニア産カカオ由来のリンゴのような風味を土台にしています。
01は爽やかな風味が特徴です。青リンゴのような若く未熟な感じをお楽しみください。
02は赤リンゴの風味になります。
03は甘味を強くするため、砂糖を粗糖(SUGER CANE・ブラウンシュガー)に変えています。
熟成感や発酵感という凝縮された甘味の印象が出て、ドライアップルのような“加熱加工された果実”のイメージに仕上げています。
SAVORY
SAVORYは、花や樹皮など植物系の風味が特徴です。
01は果実感のSWEETNESS(甘味)とACIDITY(酸味)をベースにしながら、FLORAL(白い花のイメージ)の特徴が出ています。
02はブラジル産カカオとコロンビア産カカオの比率を01と逆にして、挽き具合や焙煎を変えています。すると甘いスパイス感のあるCOCOA(チョコレートライクな味わい)がベースにきて、WOODY-DARK(樹木のような苦味)やFLORAL-GREEN(爽やかな風味)など複雑な風味が組み合わさります。
03はハイチ産カカオ豆を深煎りにし、BITTERNESS(苦味)を強くしています。WOODY(樹液・黒蜜のような風味)が特徴的に表れています。
9種に使われている、ブレンド前のチョコレートも登場
さらに今回はこの9種のほか、それぞれに使われてる材料のチョコレートや砂糖、さらにパウダーまでもお味見していただきました。
最後にはFRUITY01に相性のよいお茶「焙煎紅茶レモングラス」を味わっていただく、ゆったりと時間が流れました。
参加いただいた皆さまは、「違いがわかる!」「これが好き!」などご感想をテーブルで共有しあったり、熱心にメモをとっていただいている方もいらっしゃいました。
山下に質問をいただいたり、どのチョコレートが好きか最後に投票を行ったりと、終始和気あいあいとした雰囲気で会は進みました。
実際にお客様の声をご紹介します。
「新作のブレンド9種だけでなく、単種のチョコも食べてみることができて、ブレンドチョコの価値への理解が深まった。好きな品種も、どんなときに食べたいかで変わってくるかもしれない。(例:ティータイム、食後、お酒のつまみ等)」
「解説を耳にしながら、食べ比べられるのはとても貴重で楽しくおいしい時間でした。おかわりもできるのありがたかったです。Minimalの食べ放題みたいでワクワクして最高でした!」
「食べ比べなければ、ここまで感じることができなかったのでとても良い機会になりました。ご説明があったのでとてもわかりやすく良かったです。」
「マニアック最高!」
「努力に裏付けられたアウトプットに感激です。差し上げる方のことを思ってチョコ選びをしたいです。」
「来週もう一回参加したいくらい本当に楽しかったです。
豆や砂糖のtasting用のチョコレートから、ここまで面白い表現ができることに驚き、そしてまだまだ可能性があることに未来への期待も高まりました!」
他にもたくさんのご感想をいただきました。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。
今年10周年イヤーとなるMinimalは、さまざまな記念イベントを企画しています。
ぜひ今後もご参加いただき、一緒にお楽しみいただけたら嬉しいです。
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