【Minimal Works:Flight】3人の職人座談会「理想の味の表現へ」

2023.01.25 #Minimal's Story & Report

Minimalのチョコレート職人たちが“表現者”として作品制作に臨む「Minimal Works」。
2023年、カカオの表現に挑んだ3人のショコラティエ・職人が制作の舞台裏を語り合いました。

3人のルーツと個性が、新しい手法を生む。

Minimalには多彩なキャリアとバックグラウンドを持つ職人が数多く在籍しています。
今回の3人をご紹介します。

1人目は、エンジニアリングディレクターで、ソムリエ(ワイン)をルーツに持つ朝日。(写真右)
2人目は、パン職人の修行を積んできた、チームリーダーの奥野。(写真左)
3人目は、アパレル業界から製菓の仕事に転職した、異色の経歴の増田。(写真中央)

朝日
僕がやってきたワインは、あくまでブドウという果実の延長線上にあるものを作っていくものです。一方で、奥野くんのルーツであるパンづくりは、生地づくりをベースにしながら素材を混ぜ合わせて新しいものをつくっていく発想が強いと思います。

新しいメンバーが加わるごとにMinimalとして取れる手法が増え、新しい観点が増えています。

パン職人の経験から、香りを“足していく”発想で。

朝日
Minimalの通常ラインアップはフレーバーごとにつくっていますので、今回のように産地ごとでつくるのは方法論が変わりますね。
今回担当したチョコレートで思い出深いエピソードを振り返っていきましょうか。ではまず奥野くんから。

奥野
僕はガーナを担当しました。今回表現したかったのはクラシックなチョコレートらしい味わいを、ガーナという馴染みのあるカカオで形にすることでした。
ただ、最初に豆の味を確認した時点で今年届いたガーナは香りの種類が少なく弱い上に、甘いスパイス感も足りない点が気になりました。

朝日
豆の味は毎回変わりますからね。

奥野
こういう素材が届いたときは、むしろ作り手の腕の見せどころだと思います。おいしいものをつくってやろうと燃えましたね(笑)

朝日
最初はどんな思考をしたんだっけ?

奥野
スパイス感が足りないところは、一部にさとうきび由来のブラウンシュガー(カソナード)を使おうと考えました。バニラのような甘い香りが持ち味なので、砂糖由来の甘いスパイスの香りを乗せるチャンスだと思ったんですね。

朝日
Minimalの「CLASSIC」ラインと比較して足りないものを「足していこう」と思考したんですね。これは僕がやってきたようなMinimalの「引き算」の方法にはなかったアプローチで、奥野くんらしさが出ているところだね。

僕は素材を見て、何を削り出していけば面白いんだっけ?どうやって尖らせるんだっけ?と考えてしまうけど、奥野くんは理想の形が先にあって、そこに近づけていくアプローチをとっていく。それはパン職人の経験が活かされていると言えるのかな?

奥野
そうだと思います。

朝日
わかりやすく良い素材を持ってきておいしいものができるのは当たり前だけど、そうでない複雑な素材でも理想の味に近づけていくのは、技術と経験が必要ですね。
カカオの焼き(焙煎)はどうでした?

奥野
カカオの焼き方は微調整を繰り返しました。焙煎度合い、挽き具合、砂糖の濃度や種類を組み合わせて、心地よい甘い香りのする「CLASSIC」に向けて仕上げました。
今回のガーナは、10人中10人が気に入るような王道のチョコレートになったと思います。

朝日
本当に?10人中8人で十分じゃない?(苦笑)

奥野
いえ、10人中10人です(笑)。カカオの香りに加えてカソナード由来のスパイス感も楽しんでいただけると嬉しいですね。また通常のラインのCLASSICともぜひ食べ比べてみていただきたいです。

どれだけ深煎りにしても、カカオ豆の“本質”は必ず主張する。

朝日
増田さんのチョコレートはどうでしたか?

増田
私はタンザニアを担当しました。けっこう難しかったですね。

朝日
僕も最初にテイスティングしたとき、フレーバーが複雑で1個に絞りきれなかった記憶があります。

増田
今年のタンザニアは、青リンゴのような酸味と、ナッツのようなチョコレート感が混在してちょっと複雑な風味でした。このキャラクターを両方とも活かしたいと考えて、理想は「チョコレートケーキ」をイメージして開発に着手しました。

奥野さんから、ブラウンシュガーを入れて「アップルコブラー」※みたいな仕上がりを目指すのはどうかとアドバイスをもらったこともヒントになりました。
※りんごを使った焼き菓子。クッキークランブルをかけて食べることが多い。アメリカの家庭で多く食べられている。

奥野
そういえば、そんなコメントをしましたね(笑)

増田
カカオの焙煎は何度も変えました。普通に焼いただけでは理想の風味にたどり着かず、焦げる寸前みたいな極深煎りを試したり、スチームもやりました。お砂糖もブラウンシュガーや黒糖などいろいろ試しました。

結果として、スチームを入れてチョコレートの焼き菓子感を出した生地と、果実感をしっかり出した生地の2種類をつくってブレンドしました。

朝日
今回のトライでどんな学びがあったとか、どこが面白かったとかありますか?

増田
学びとしては、焼き加減や砂糖のほんの少しの変化で味がものすごい変わることを実感したことですね。ブレンドの配合でもすごい変わるので、バランスを取るのはかなり難しかったです。

あとは、やっぱりカカオ自体が持つポテンシャルを痛感しました。たとえばどんなに深煎りにしても、青リンゴのような酸味は消えずに主張してくるので(笑)、やっぱりそっちが主役になるんだなとか。なので、最終的にはチョコレートケーキではなく「ジャム入りのビスケット」というイメージの仕上がりで着地しました。

朝日
今回初めてWorksの制作に参加してもらいましたが、どうでしたか?

増田
楽しかったですけど、難しかったですね(笑)

朝日
点数をつけるとしたら、何点?

増田
「チョコレートケーキ」という当初の理想にたどり着けなかったという意味では、80点ぐらいです。でも、おいしいものができたという手応えはあります。チョコレートケーキのコンセプトはまた目指してみたいですね(笑)。

カカオ豆の“熟成”で、ブドウの味を引き出す。

朝日
では、僕が担当した中でコロンビアの話をしますね。
コロンビア(以下、アルアコ)はMinimalで一番の人気銘柄で、「まさにブドウのような味」が魅力です。カカオ豆と砂糖でつくるチョコレートであるにも関わらず、たしかにブドウの味がするところが僕の理想のアルアコです。

ただ、今年は天候不順に見舞われ、アルアコの豆からブドウの味を探すのが困難でした。乳酸が強く出ていて、ヨーグルトのような風味が際立っていました。

増田
今年の豆は難しかったんですね。

朝日
そこで今回は熟成期間を長くとり、ブドウの果実味を引き出して乳酸の印象を弱める工夫を行いました。熟成はずっと実験的に取り組んでいる手法ですが、ブドウのキャラクターが最大になるタイミングを注意深く見計らいました。

皆さんにお伝えするレシピカード情報からすると、ほとんど差分というのは見えてこない程度かもしれませんが、何とかブドウを探り出す工夫をしました。

奥野
朝日さんとしては、今回の表現はどうでしたか?

朝日
ブドウの風味には、「白いブドウ」と「赤いブドウ」があるのですが、赤いブドウがきれいに出た“Minimal2年目のアルアコ”も印象深いですね。豆の熟成が奇跡的にうまくいった年でした。

増田
あの年のアルアコは確かに印象に残ってます!

朝日
そこからすると、ブドウの色が変わってしまったので、難しさが増しました。近年のアルアコは白いブドウ系統に変わってきていて、それはそれで面白く、その魅力をひきだすために追求できたと思います。でもあの赤いブドウを今も追い求めていますね。

技術力で再現性を持ちたいので、まだまだ発展途上ですね。


三者三様で制作に挑んだ「Minimal Works:Flight 2023」
現在富ヶ谷本店・一部催事にて販売中です。

またチョコレートスイーツのサブスク「CHOCOLATE ADDICT CLUB」の2月でもお届け。

オンラインストアでは2月1日より販売をスタートします。


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