JOURNAL

予定調和ゼロ、対話が生んだクラフトプロダクト。「生チョコレート -新政Cosmos2020【醴】-」ができるまで。

2021.12.23 #Products

この冬、Minimalと新政酒造がコラボレーションして共同開発した、ほぼ類例を見ないような、新しい生チョコレートが誕生しました。

昨年大好評いただいた「生チョコレート -新政 No.6 X-type 2019-」とは違う切り口で、Minimalと新政酒造という素材に寄り添った本質的なものづくりを手がけるクラフトマン同士がタッグを組み、新商品の開発に挑みました。
その開発の舞台裏をご紹介します。

▼目次

・チョコレートと日本酒という、“発酵”のコラボレーション
・新政酒造とMinimalの対話が生んだライブ感満載の開発プロセス
・酸味と甘みの整った日本酒
・衝撃の甘酒
・日本酒・甘酒・カカオの３要素で、真っ向勝負
・砂糖ではなく“お米の甘さ”で、甘味を整える
・デザインでコンセプトや風味の立体感を伝える
・新政酒造8代目佐藤祐輔氏評
・商品詳細および販売情報

チョコレートと日本酒という、“発酵”のコラボレーション

※撮影／堀清英

新政酒造は嘉永5年（1852年）創業。
まもなく170周年を迎える秋田の酒蔵は今、世界中の日本酒愛好家から熱い視線を浴びています。
8代目当主・佐藤祐輔氏は「日本酒界のスティーブ・ジョブズ」の異名を取り、常識を覆す純米酒を次々と送り出してきました。
木桶の仕込み桶、生酛づくり、無農薬栽培などものづくりの本質を極める姿勢を通し、国内外のクラフトマンの崇敬を集める存在となっています。

Minimalは創業７年のベンチャーです。最小限の素材で、革新的なプロダクトを世に送り出そうと日夜奮闘しています。
日本伝統の発酵技術を学び続け、チョコレートと日本酒という発酵食の共通項から新たなプロダクトを生み出したいと今回の開発に取り組みました。

新政酒造とMinimalの対話が生んだライブ感満載の開発プロセス

今回の生チョコレートの開発は最初から予期する事は出来ず、試作→試食→意見交換のプロセスを繰り返す中で生まれました。まさに新政酒造とMinimalのライブ感溢れる対話が生んだ一品です。
そのプロセスを紹介します。

1．日本酒選定

新政酒造の中核を担うラインColorsのひとつである「Cosmos コスモス -秋櫻- 2020」を使用することを決定。

2．チョコレート選定

「Cosmos コスモス -秋櫻- 2020」に合うチョコレートを10種以上試作し、ベースに使用するベネズエラ産カカオ豆を選定。

3．日本酒とチョコレートの配合を試行錯誤

「Cosmos コスモス -秋櫻- 2020」とベネズエラ産チョコレートの配合の試作を繰り返し、最適な相性を見極める。しかし、この段階では双方が納得する味わいの実現に至らず苦戦。

4．甘酒により生チョコレート全体の甘みの主体を置き換える

両者で試食を繰り返す中で、日本酒とチョコレートの複雑さを補完して、さらに奥行きをもたせるために、麹から造った甘酒を、生チョコレート全体の甘みの主体にするアイデアに至る。

5．白麹菌と黄麹菌で造った2種の甘酒で試行錯誤

白麹菌と黄麹菌を使った2種類の甘酒に日本酒とチョコレートを加え、香りと味わいのバランスを試行錯誤しながら調整。結果として酸味、甘み、旨味をもつ白麹甘酒（醴）の採用を決定。

6．白麹甘酒（醴）の水分値を調整し、甘みと旨味を凝縮させるために、煮詰める時間を模索。

最適なバランスの味わいを実現するために、Minimalの職人が水分値を調整しながら、白麹甘酒（醴）の旨味と甘みを凝縮させるために煮詰め時間を微細に調整。

7．日本酒✕白麹甘酒✕チョコレートの最適値を見極め、完成

「Cosmos コスモス -秋櫻- 2020」と「白麹甘酒（醴）」そしてベネズエラ産チョコレートの最適な配分を試行錯誤して、「生チョコレート -新政Cosmos2020【醴】-」が完成。

以下に詳しくお伝えします。

酸味と甘みの整った日本酒

佐藤さん（8代目当主）とお話しする中で、開発にトライするお酒に「Cosmos コスモス -秋櫻- 2020」をご提案いただきました。
秋田で初めて生まれた酒造用好適米「改良信交」。その酒米は現在の秋田県では新政酒造でしか用いられていないことから「新政」を象徴する銘柄となっています。

Minimal山下：Cosmosを試飲してみて、去年取り組んだ『 No.6 』に比べると酸味は穏やかで極めてバランスの整ったお酒だなと感じました。甘みのバランスもよく、『新政』の特徴を残しつつ誰が飲んでも美味しいと感じられる味わいが印象的でした。

衝撃の甘酒

「Cosmos コスモス -秋櫻- 2020」の特徴に合わせて10種以上の方向性でチョコレートを試作してみましたが、今ひとつ決め手に欠ける印象。「お酒の作り手が何を活かしたいと思っているか」を聞くため、試作品を新政酒造に送り、佐藤さんの意見も伺いました。

Minimal山下：ちょっと個性が弱いなと思っていたところに、佐藤さんも同意見で、甘酒（糖化液）を加えてみることをご提案いただきました。それはまさにとても興味があったことだったので、二つ返事でやりましょう！と答えました。開発のスケジュールなどは度外視だっただので、開発担当の片岡の表情は青ざめていました（笑）。

甘酒とは、日本酒をつくる過程で生まれる、酒米に麹を加えて糖化させた液体です。甘酒といっても、アルコールは含まれていません。

新政酒造から、酒米「酒こまち」を使って白麹と黄麹の2種で特別製造された甘酒サンプルを送っていただきました。

Minimal山下：まず、この甘酒を飲んで衝撃を受けました。チョコレートに使う砂糖などの甘さとは別物の甘みが感じました。さらに黄麹甘酒は甘み・旨味が強く、白麹甘酒は甘みと旨味に加えて、酸味が出る。この立体的な風味を使えば、一般のスイーツとは全く違う甘さを表現できるのではないかとワクワクしました。

日本酒・甘酒・カカオの3要素で、真っ向勝負

甘酒は白麹・黄麹・白黄ブレンドの3種を、日本酒と生チョコレートに入れてバランスをとったサンプルを何種類も試作しました。甲乙つけがたくそれぞれに良さがあります。

Minimal山下：今回の日本酒は、甘みがバランスされているのですが、確かに酸味を持っているお酒だったので、日本酒の酸味を持ち上げて個性を尖らせてくれる白麹甘酒（醴）が良いと思いました。また、日本酒と白麹甘酒を受け止めるチョコレートとしてベネズエラ産カカオのシングルオリジンの組み合わせが面白いと思いました。他のサンプルも含めてお送りしたところ、佐藤さんからも好感触で、最終的に味を固めていくことになりました。

今回は日本酒・甘酒（糖化液）・カカオの３要素で真っ向勝負に挑みました。特に甘酒とカカオでバランスを最終調整するのは、ごまかしの利かない、職人の腕が試される繊細な仕事になりました。

白麹甘酒（醴）の酸味と甘みと旨味のバランスを整えるため、Minimalの開発担当の職人である片岡が煮詰めて濃縮濃度を調整しました。あえて水分を揮発させ、甘みと旨味を凝縮させて、最終的に日本酒生チョコレートに合わせます。この微細なコントロールによる香りの調整が多層的な味わいに大きな影響を及ぼしています。

砂糖ではなく“お米の甘さ”で、甘味を整える

味わいは「Cosmos コスモス -秋櫻- 2020」の甘みと酸味の絶妙なバランス、心地よい渋味とアフターテイストに、白麹甘酒（醴）の甘みと酸味と旨味があります。そしてカカオ由来のチョコレートのドライフルーツのような甘味、酸味、渋味、苦味が合わさり、ここでしか味わうことができない複雑で芳醇な風味に仕上がりました。

白麹甘酒（醴）のもつ甘味は砂糖やクリームの甘さとは種類が違い、旨味も持っています。種類の違う甘さが加わることで味の複雑さだけでなく、奥行きが生まれて、全体として立体的な風味を表現できました。

コラボレーション1回目の日本酒×カカオから、甘酒が加わることで、これまでにない表現の幅を獲得することができたと思います。

新政酒造の日本酒とその過程でできる甘酒というプロダクトが起点となり、他に類をみない商品開発に挑みました。
もちろん、その素晴らしい副材料を受け止めるためにチョコレートはゼロベースで調整しました。一番手と時間がかかっているのはやはりチョコレートの調整です。

このようなプロセスを経て、理想を求めるクラフトマンである新政酒造とMinimalが良い意味でぶつかり合い、まだ誰も食べたことのない生チョコレートをお届けできるのではないかと思います。

デザインでコンセプトや風味の立体感を伝える

今回白麹の使った甘酒を白麹甘酒（醴レイ）と名付けました。

Minimal山下：今回使用している甘酒（糖化液）は、このために新政酒造に特別に醸造してもらったもので、とても貴重で清らかな印象を受けたので、その神妙さを表したく、甘酒のルーツで古代に献上酒とされていたという醴酒から「醴」という文字を拝借しました。

※醴酒とは甘酒のルーツと言われるお酒です

パッケージとして、日本酒という國酒にちなんでMinimalでは珍しい桐の木箱を採用。
蓋のデザインとして、まず背景は新政酒造のデザインを、そして米とカカオという両者のシンボリックな素材を模したロゴマークを挟んで、両者のロゴを左右に配置しました。

シールのデザインでは、背景色には今回使用している「Cosmos コスモス -秋櫻-　2020」のピンクを採用。シール上部にはCosmos2020表記（新政さん側に略称の許可をいただきました）とColorsシリーズのロゴをあしらいました。シール下部に白麹甘酒を表す「醴」の文字と、「醴」の字を模した酒瓶・お猪口・酒枡を立体的にデザインし、風味の立体感を直感的に伝わることを意図しました。

アルコール入りのため大人の方向けのチョコレートですが、アルコールが飲める方はぜひ一度召し上がっていただきたいです。香料も人工甘味料もなく、お米が本来持つ自然の甘さとチョコレートの甘さの重層的な味わいを楽しめます。
日本酒とチョコレートの最先端を模索する中で生み出した、新たな世界をご堪能ください。

新政酒造8代目佐藤祐輔氏評

※撮影／船橋陽馬（根子写真館）

昨年に引き続くMinimalさんとのコラボレーションは、非常に刺激的なものになりました。

今回は素材レベルでMinimalと新政を融合させるべく「生チョコレートの甘味の主体を、（当社の麹でこしらえた）甘酒に代える」という試みを盛り込みました。

出来上がったチョコには、麹由来の爽やかな酸味と穏やかで複雑な甘みが表現されており、日本の発酵技術の良さがいかんなく発揮されているのではないでしょうか。

みなさまにも、この革新的な取り組みをぜひ体験していただきたいと思います。

生チョコレート -新政Cosmos2020【醴】-
商品詳細および販売情報

【商品名】
「生チョコレート -新政Cosmos2020【醴】-」

【販売開始日】
オンラインストア：オンラインストア販売分は完売しました
店頭：販売中

【発売チャネル】
オンラインストア・富ヶ谷本店・代々木上原店

【価格】
3,780円（税込）

【内容量】
18粒
※日本酒（ボトル）は商品に含まれません

【商品詳細】

こちらからご覧ください

※新政酒造様へのお問い合わせはお控えください

“飲む伝統文化”　新政酒造

※撮影／堀清英

「秋田県産米を生酛純米造りにより六号酵母によって醸す」という方針のもと秋田県で栽培された酒米を用い、酒母には江戸期の伝統製法である「生酛」のみを採用。また酵母は当蔵で昭和５年（1930年）に採取された「きょうかい６号」（六号酵母）のみですべての酒を醸造しております。さらに最近は、38本もの「木桶」を保有し、その製法の継承を模索しているほか、秋田市の山間農村「鵜養」（うやしない）にて、無肥料・無農薬の自然栽培により、酒米の栽培に取り組んでいます。新政酒造は地域性を尊びながら、本来の日本酒の姿を求めて様々なチャレンジを続けています。

素材と製法を探求するチョコレートの職人チーム
「Minimal - Bean to Bar Chocolate -」

Minimal は世界のカカオ産地を訪れ良質なカカオ豆から職人が一つ一つ手仕事でチョコレートの製造をしています。「丁寧にシンプルに、最高の素材を活かし香りを最大限に引き出す」という原点に真摯に、イタリアの三ツ星レストランやフランスの M.O.F.パティスリー、国内外のトップパティスリーで腕を磨いてきた職人達が切磋琢磨する、チームワークでMinimalのチョコレートやスイーツをつくります。

素材のカカオは現地で発酵・乾燥作業の研究やレクチャーを行い、カカオ農家と一緒に高品質高単価に適うフレーバーの開発を行います。プランテーションの名残があるカカオ産業のサステナブルな経済的自立を目指し、技術支援やフェアでエシカルな取引を行います。2019 年は JICA の ODA 案件化調査プロジェクトでニカラグアにおいてカカオの調査を行いました。

素材を活かす“引き算”の思想と独自製法により、国際品評会で 6 年連続 65 賞を受賞。基本に忠実に、一方で伝統や手法にはとらわれない自由な発想で皆さまの生活に彩りを加える「こころに遺るチョコレート」をお届けしたいと思います。